「技術への過信捨て外へ」は今日(4月8日)の日経新聞朝刊1面の囲み記事「こもるなニッポン」のタイトル。記事は日本企業が輝きを失った原因の一つを「技術への過信」に求める。
記事は中東の原子力発電所の商談で韓国勢に敗れた日立製作所の中西社長の言葉を紹介する。「我々は市場から遠くなっていた。技術への過信があった。攻めなくても繰るだろうという気持ちもあった」
もう少しこの問題を突っ込んで考えてみよう。少し前(4月2日)のニューヨーク・タイムズに海外に活路を求める日本の食品産業に関する記事があった。(どういう訳か私のブログの読者の中にエスビー食品等食品メーカーの方もいらっしゃるので何かの参考になれば幸甚である)
タイムズの記事は「日本の企業は高品質の商品を持つけれども、弱いマーケッティングとブランド戦略が時として障害となっている」と述べる。記事はグリコのポッキーの話を紹介している。グリコのポッキーはヨーロッパでは、クラフトとのジョイントベンチャーを通じて、ミカドhttp://www.glico.co.jp/corp/corp03.htmの名前で売られている。海外部門のヘッド草間?氏は「西欧の大企業は大量生産と低コスト化に優れている。我々が作るものは彼にはコストが高過ぎ、手間がかかりすぎる」と述べている。
つまり日本のお菓子メーカーは欧米企業が手がけないニッチなものを作り販売には欧米企業のネットワークを利用しているということだ。これでは売上を大きく伸ばすことはできないと思うがそのことは横において別の話を紹介しよう。
最近読んだ「キンドルの衝撃」(石川幸憲著:毎日新聞社)の中に、電子書籍キンドルを生み出したアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの印象深い言葉があった。曰く「企業は顧客のニーズに的を絞るのではなく、スキル(技術)に焦点を合わせてしまう。新分野に進出しようとすれば、その領域でスキルを持っていないのに、なぜ進出するのかという質問が発せられる。つまりこのようなアプローチでは企業の寿命が限られてしまう。」
アマゾンは電子書籍を欲しいという顧客の潜在的なニーズに着目した。そしてデイバイスの専門家を雇いキンドルの開発に漕ぎつけたのである。
これらの話を総合すると日本の企業はまず企業内に保有する技術(つまり人材)からスタートする。そして顧客ニーズがあっても技術がないと諦める。一方アマゾンのように優れた欧米の企業は顧客ニーズからスタートして、必要な技術(つまり人材)を採用してプロジェクトを完成させる。
これは企業の根本哲学と雇用制度の違いからくるものだ。しかし「だからしかたがない」では日本の企業は海外で勝つことはできないのである。
タイムズは欧米企業は現地で最も優秀な人材を高い給料で雇い、現地の戦略立案にダイナミックに関わらせるが、日本企業の海外展開は往々にして日本のオペレーションを延長したものだと問題点を指摘している。そしてボストンコンサルティングの森氏の「優秀な技術だけで勝つことはできない。現地市場のトレンドを理解したセールスや人材が必要だし、現地の好む味を考慮した開発者が必要だという言葉を紹介して記事を結んでいる。