格付機関フィッチは中国の銀行が行っている証券化スキームのリスクを指摘するレポートInformal Securitisation increasingly distorting credit dataを昨日発表した。
公式データでは今年前半に中国の銀行は貸出ペースを急速に落しているが、フィッチはローンのオフバランス化が行われているので実態は積極的な貸出が行われ、不良債権リスクが高まっていると警告する。
ニューヨーク・タイムズは証券化スキームについてアナリストの説明を紹介していた。それによると「銀行は例えば5千万ドル(45億円)の大型ローンを、現金5千万ドルと引き換えに信託会社に引き渡す。信託会社はこのローンを富裕層向けの投資商品に仕立てて銀行に渡す。銀行はその商品を投資家や預金者に販売しその代金を信託会社に渡す。投資家(銀行の暗黙的な元本保証を信じているので預金者というべきだろう)は通常金利の2倍の利息を受け取る」というものだ。
5千万ドルはあたかも投資の如く信託会社に渡されるが、実質は不動産プロジェクト向けの短期の金利の高い融資である(信託会社が元本保証を行う)。
フィッチのレポートによると、証券化されたローンの期限が投資商品の期間より長いことが一般的になりつつある。つまり投資家にお金を返す期日の方が先に到来するケースが多い。この場合もし次の投資家を募ることができない場合は、銀行がローンを買い戻して、ローンは再び銀行のバランスシートに乗っかることになる。
ここが「疑似」証券化といわれるゆえんだ。つまり本当の証券化では銀行から信託会社にローンが真正売買される(ローンの所有権が完全に移転する)が、疑似証券化では真正な売買が行われず、銀行の買戻し特約が付いている。
スタンダード・チャーター銀行のアナリストGreen氏は「信託会社はこのスキームで2009年に数千億ドル相当の資金調達をしただろう」と推定している。
業界のアナリストによると中国銀行監督管理委員会は先週非公式に銀行に対して、信託会社と組んでローンの証券化をやめるように命じた。今までにも当局は疑似証券化を止めさせることを試みてきたが、銀行と信託会社は抜け道を見つけてローンのリパッケージを進めてきたということだ。
もしフィッチの分析が正しいとすると、中国の銀行は時限爆弾を抱えている可能性がある。疑似証券化したローンが期限に返済されない場合、突然バランスシートに戻ってくるリスクが高いからだ。
フィッチは中国の大手銀行は流動性が高いので、疑似証券化商品がバランスシートに戻ってきてもこなしうるだろうが、小さい銀行の場合は負担が圧し掛かる可能性があると指摘している。