金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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オバマの経済政策はどれ位成果をあげているのか?

2010年07月16日 | 国際・政治

昨日(7月15日)に金融規制改革法を議会で承認させたオバマ政権だが支持率は低下している。毎日支持率を調査しているギャラップによると、15日現在のオバマの支持率は44%で、不支持率は48%だ。オバマが大統領に就任して530日強になるが、同時点における平均的な大統領の支持率は54.8%なので支持率は平均より10%程低いということになる。

支持率が低い最大の理由は経済政策の評判が良くないことだ。ギャラップが「今何が一番問題なのか」と調査対象者に聞いたところ、31%の人が経済全般、22%の人が雇用・失業問題、11%の人が政権・議会への不満、同じく11%の人がリーダーシップの欠如をあげている。

ではオバマ政権の経済政策は失敗しているのか?

米政府は先日「景気刺激プログラムの実施により、250万人から360万人の雇用の創出あるいは防止を行っている」と発表した。この数字は超党派の連邦議会予算事務局や専門家の算出した数字と一致するものなので、信頼して良いのではないだろうか?

だが共和党は「オバマ政権は財政悪化を放置している、景気刺激策は効果が乏しい」と主張し、失業保険の延長に関する法案をブロックしている。ニューヨーク・タイムズはバイデン副大統領の「私は共和党が何に反対しているか知っているが何に賛成なのかは知らない」という言葉を紹介している。

では米国民の景気刺激策に対する評価はどうなのだろうか?

タイムズの記事によると、直近のCBSNニュースの調査では約4分の3の米国民は景気刺激策は経済を改善していないと述べている。またワシントンポストとABCの調査では半数以上の回答者が政府は追加的な景気刺激策を取るべきではないと回答している。

テネシー選出のアレクサンダー共和党上院議員は「これ以上国が借金を増やすことは、民間企業への融資や雇用に向かう資金を吸い上げることになる」と述べ、オバマ政権が行った医療保険法の改革、金融規制強化、エネルギー政策などは民間の成長活力をそぐものだと警告する。

今回の不況で失われた米国の雇用は7百万人を越える。景気刺激策の雇用創出効果がオバマ政権が述べるとおりだとすると、もし景気刺激策なかりせば10百万人を越える人が職を失ったことになるのだが、このような主張は米国民には余り説得力がないようだ。

規制強化とか大きな政府への反発というのは一種の宗教的信念のようなものではないだろうか?と私は思うことがある。

宗教というと米国人の41%は2050年までにキリストは地上に戻ってくると信じているということだ(PewResearch)。より詳しく見ると23%の人は「確実に戻ってくる」と信じ、18%の人は「多分戻ってくるだろう」と信じているということだ。(46%の人は戻ってこないと信じている)

国民皆保険と金融規制改革法という米国の歴史でランドマーク的な二つの法案を通したオバマ大統領。彼もまた支持率が低下して中間選挙で敗北することを恐れずに「信念を通した」というべきなのだろうか?

菅首相は著書「大臣」の中で「民主主義とは期間を限定した独裁政治である」と喝破しているが、その時の彼の頭に中には米国の大統領制度があったことは間違いないだろう。

オバマ大統領の二つの改革が米国にとってプラスの結果を生むかどうかは将来に委ねるしかないだろう。だが今までの仕組みに行き詰った時、何かを変えることができるシステムを持ていることは良いことだ。そしてその変革は時として国民に不人気なことがあるが、それに耐えるのが政治家の宿命なのかもしれない・・・・・。

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