金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米、金融改革法案成立

2010年07月22日 | 金融

昨日(7月21日)オバマ大統領が金融改革法案に署名した。リーマンショックから2年経って、1930年代以降で最大の法改正が行われた。ただしブルンバーグの世論調査によると回答者の約8割はこの法案が金融危機の再発防止効果や軽減効果がないと判断している。その判断が正しいかどうかは将来に委ねるとして、法改正のポイントを見ておこう。今後米国の関係省庁は法案の具体化に動いていく。それは日本を含む多くの国の金融機関の監督行政に大きな影響を与えていくことになる。

  • 修正「ボルカー・ルール」 銀行はティア1キャピタルの3%を上限として投資したヘッジファンドとプライベートエクイティを通じて、Propriety trading(証券取引)を行うことができる。
  • 「標準化」されたデリバティブ取引はCFTC(商品先物取引委員会)が監督する取引所にて取引を行う。カスタマイズされたデリバティブは監督官庁に報告。全般的にデリバティブ取引に関する基準を強化する。
  • 銀行は金利、外為取引、金、銀に関するデリバティブとスワップ取引を行うことが認められるが、それ以外の商品取引は関連会社で行う。
  • トラスト優先証券(一種の劣後債務)による資金調達をティア1キャピタルから控除(ただし5年間の経過措置あり)することを含む銀行の自己資本基準の強化
  • (仮訳)「金融安定監視委員会」を設立し、より広範は金融市場の監督とシステミックリスクのモニタリングを行う。
  • 預金保険機構の監督下に入った金融機関を整然と清算するための「清算機関」Orderly Liquidation Authorityの設立。
  • 預金保険を25万ドルに恒久的に増額
  • 格付機関の監督等を含む証券取引委員会の役割の大幅な拡大。
  • 住宅ローン担保証券やCDOのオリジネーターに最低5%のクレジットリスクを保有することの義務付け
  • 財務省の下に保険業界をモニターするOffice of National Insuranceを設立。
  • 連邦銀行の監督下に(仮訳)消費者関連金融保護庁を設立
  • 連邦銀行による銀行監督権限は変わらず。

新しく設立される監督官庁の名前等については定訳が固まっていないので、私的な仮訳である。

金融改革法案についてIHS Global InsightのBethune氏は「この法案は金融危機を引き起こした二つの要因について驚く程沈黙している。それは連邦銀行や証券取引委員会など現存の監督機関の有効に機能しなかったことに対する補正措置と住宅危機におけるファニーメイとフレディマックの極めて重要な役割とそれらの破綻を救済するために多額の税金が投入されたことである」と述べている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする