金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日本株の配当利回り、米国株を上回る見通し

2010年07月28日 | 株式

ファイナンシャル・タイムズによると、少なくとも1980年以降では初めて日本株の配当利回りが米国株のそれを上回る見通しである。ソシエテジェネラルのレポートによると、今年の日本株の配当利回りと米国株の配当利回りは2.1%に収斂し、来年には日本株の配当利回りが米国株を上回る見通しだ。

また野村證券の推定では、S&P500の今年の暦年ベースの配当利回りは1.9%でTopixの2011年3月期配当利回りは2.2%になる。

国債との利回り格差を見ると日本株の配当利回りは10年国債より1%程度高い。10年の米国債の利回りは3%程度なので、こちらは国債利回りが1%程高い。日興アセットのグローバル・ストラテジスト・Vail氏は「日本の長期金利は米国より低くて、通貨は弾力性があるので、米国株に較べると日本株は相対的に魅力的に見える」と述べている。

もっとも配当利回りの点から日本株が割安に見えるかも知れないが、必ずしも米国株に較べて日本株の価値が高いとは限らないとFTは述べる。

その第一の理由は米国では自社株買いが活発になっているからだ。企業は配当以外に自社株買いで利益を株主に還元しているので、配当利回りだけに注目すると誤解する可能性がある。

次に金融危機の影響で米国企業特に銀行は、配当を急減させ自社株買いも減少させた。「昨年は配当に関しては史上最悪の年だったが、今年はもっと良さそうだ」とS&Pのシニアアナリストは述べている。

更に投資家は予想「益利回り」Earnigs yeild(一株当りの純利益を株価で割ったもの。株価収益率の逆数)に注目しているが、米国株の益利回りは足元で6.5%、向こう12ヶ月で7.9%になると予想されている。

最後にFTは高配当株に注目する日本の小型投資家は5月以降買い越しているが、日本経済はデフレの最中にいるので、国際的な投資家はまだ日本株に賭けるより国債を持つ方を選好するかもしれないと結んでいる。

☆  ☆  ☆

全般的にみると先進国の株で大きなキャピタルゲインを狙う時代は暫く(あるいはかなり長い間)こないだろう。キャピタルゲインは新興国株式で狙い、日本株は配当狙いで持つというのが、個人投資家としては無理のない投資姿勢ではないだろうか?

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売上微増・利益急増の米企業をどう読むか?

2010年07月28日 | 社会・経済

昨日(27日)米国のコンファレンス・ボードが発表した7月の消費者信頼感指数は6月の54.3(6月分は52.9から上方修正)から、50.4に下落した。これは2月以来最低の水準で雇用環境の悪化が原因だ。コンファレンス・ボードが5,000人の消費者に調査をかけたところ、職を得ることが困難と答えた人の割合は6月の43.5%から45.8%に増えている。

ニューヨーク・タイムズはムーディーズのシニア・アナリストSweet氏のThis suggests hiring remains few and far betweenという言葉を紹介している。Few and far betweenは「とれもまれだ」という慣用句だから、雇用はとてもまれだということになる。

雇用が増えないのは米企業が、利益捻出のため人件費の削減を続けているからだ。

ニューヨーク・タイムズはIndustries find surging profit in deeper cutsという記事で企業サイドの状況を説明している。それによるとS&P500社の内、第2四半期の業績を発表した175社は平均で6.9%の増収だったが、利益は42.3%増えている(トムソン・ロイターによる)。また1割以上の企業が減収にも関わらず増益だった。「産業全体が新しい利益水準でオペレーションを行っている」とゴールドマン・ザックスの株式アナリストは述べている。

2002年のITバブル崩壊不況では、利益率は4.7%に落ち込んだ。2009年に利益率は5.9%まで低下したが、ニューヨーク・タイムズはアナリストは来年までに利益率は8.9%という記録的な高さになると予想している。

この違いは企業が人件費を圧縮していることによるとクレディスイスのチーフ・エコノミストは述べている。人件費を圧縮しているのは、減収企業だけではない。増収増益企業においても、関心事は高い利益率を維持することで、不況時に減らした従業員を元に戻すことではない。景気回復が本物かどうか自信が持てないので、企業は雇用を増やすことができないのである。

そして雇用が増えないので消費者は安心して消費を増やすことができず、景気の本格的回復に自信が持てないというのが米国経済の現状だろう。

雇用と設備投資を抑制した結果、米国企業が積み上げた現金は過去半世紀で最高のレベルに達したという。

米国企業の好決算が持続すると読むか、消費の腰折れで息切れすると判断するかは考えどころである。

ニューヨーク・タイムズはGluskin Sheffのチーフ・エコノミストRosenberg氏のコメントを紹介していた。「米国経済は軟弱地盤の上にいるだろうが、軟弱度合いはかって予想されたほど軟弱ではないだろうというのが一般的な見方である」

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