ビル・グロス、67歳。世界最大の債券ファンド・ピムコ・トータルリタンファンドを今なお運用する債券ファンド・マネージャー。08年の金融危機ではファニーメイ債やフレディマック債を安値で大量に購入し、後にそれらの機関が国有化されたことで17億ドルの利益を上げたグロスだが、今年は読みが外れていた。
彼は今年2月に投資家にインフレのため金利は上がると警告し、米国国債を売り払ってしまった。だがグロスにとって不幸なことに、欧州の金融危機等で経済成長は鈍化した上、米連銀のオペレーション・ツイストの効果で債券利回りは65年振りの低利回りとなった。
FTによると世界最大の債券アクティブファンド・トータルリターンファンドの今年のパフォーマンスは1.1%とベンチマーク(バークレーズ・アグリゲート・ボンド・インデックス)の6%に較べて極めて貧弱だ。
グロスは今年は良い運用成績を残すことを諦め来年に賭けることも可能だったろうが、大胆な賭けにでた。今度はデュレーション(債券の償還期限)の長い米国債を購入することで、長期金利の低下に賭けたのだ。
これに対しては「彼が持つファンドの大きさ(トータル・リターン・ファンドは2,420億ドル)から見て大変危険な賭けだ」(DALインベストメントのブラウン社長)という声もある。
連銀のオペレーション・ツイストでは政府が発行する30年債の9割相当を来年の6月まで連銀が購入することになっている。今週行われたオペーレーション・ツイスト後最初の30年債オークションでは投資家の需要は史上最高レベルに達した。
オペレーション・ツイストに賭けて大胆な勝負にでたグロス。
ウィキペディアによると、彼は純資産21億ドルを持ち、世界で564番目に裕福な男だそうだが、67歳になってもなお大胆なポジションを取る。若い時ブラックジャックで鍛えたそうだが、本当に賭けることが好きな人だと改めて感心した次第。