注意深く森を歩くと生命の流れを感じる時がある。この前苗場山から赤湯へ向かってブナの林を歩いている時、ブナの巨木が倒れて青空が広がっている場所があった。
倒木の周りにできた空き地の中では日の光を受けたブナの幼木がすくすくと伸び始めていた。一人が「ブナって倒れると直ぐ朽ちるのですよね」といった。巨木は命が尽きた時静かに倒れ早々と大地に帰っていく。そしてその後に子孫達が育っていく。生命のバトンはこのようにつながっていく。
「人間もこうありたい・・・・」と思う。やるべきことをやり終えたら静かに身を引き、後輩達に青空のような将来を残したいものである。朽ちてもなお周りの木に寄りかかりながら枯れて、若木に当る陽光を妨げることはしたくないものである。
土砂が崩れて崩壊した斜面があった。そこが過去ブナ林であったとしても直ぐにブナが育つわけではない。崩壊した斜面には下草が生え、潅木に変わり、やがて沢胡桃(さわくるみ)のように荒地に強い木が育っていく。ブナが育つのはその後だ。ブナは森の最終相である。だがそのブナもまた土石流で倒れる時があり下草からの循環に回帰する。
森を注意深く歩くと、この世に変わらないものはないのだ・・・ということを体感する。
ところで下山口に近いところで幹が密着した面白い姿のブナの木を見た。
連理の枝のようなブナだ。年を取っても夫婦支え合って行きなさいという教えかなぁ。
森を歩くと生命を教えられる。