金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【書評】「人に強くなる極意」 中高年にも役立つ本だ

2013年12月25日 | 本と雑誌

新幹線の往復の中でさっと読んだのが佐藤優氏の「人に強くなる極意」(青春出版社)だ。読者のターゲットは今働いている人、あるいはこれから働こうとしている人、つまり青年壮年を意識した本と考えて良いだろう。そのことは例えば「まえがき」の中の「正社員として働くことは一層難しくなる。正社員として働くには、ブラック企業しか選択肢がないという状態になるかもしれない。仕事で海外勤務をするようになれば、現地で反日暴動に巻き込まれる可能性もある。このような状況に対応できる人間力を強化することが必要であり、そのための基本技術をこの本で披露した。」という一文を見ると佐藤氏が若い世代をターゲットにしていることは間違いない。

では我々中高年が読んで益するところが少ない本か?というと私はそうではなかった、と思う。

例えば第2章「びびらない」の中に次のような一文がある。「『今の食生活では老化が進みます』とか『ガンになってしまいます」とか、消費者を不安にさせることで商品を買わせる。コマーシャルもそんなものが多いと思いませんか?・・・そのコマーシャリズムに乗って不安になり、びびってしまう。結局必要のないものまで買ってしまうなんてこともあります」

これはむしろ高齢者に当てはまる現象だろう。どうすればそのような詐欺まがいの商売の罠から逃れることができるのあろうか?

私はそれを「ある程度の高等常識によるスクリーニング」と呼んできたが、「人に強くなる極意」の中の「必要以上にびびらないようにするには相手を知ることだ。相手がどういう意図でのぞんできているのかを判断する相手の「内在的論理」を見抜く力だ」という言葉も参考になった。

例えば「この株は値上がりします。儲かるから絶対買うべきです。」的な話が来たとすると、私は次のように判断する。「強力なインサイダー情報でもない限り絶対儲かると言う話はない。かりに絶対儲かる話であれば、他人に儲けさせて自分は僅かな口銭を稼ぐより自分で投資をするはずだ」

この後段の部分は相手の「内在的論理」を分析しているのだ。年をとることで総ての人が賢明になるとは思わない。その理由は人には「欲」や「恐怖心」があり、セールスパーソンにそこをくすぐられたり、脅かされたりすると冷静な判断ができなくなるのである。

「あきらめない」という章も良かった。「あきらめない目標」を複数設定して、一つが期限オーバーで達成不能になれば、リセットして次の目標に向かう、というのが良かった。「あきらめない目標」をリセットする・・・というのは一見自己矛盾のようだが、目標の中には究極目標と手段的目標があると考えれば、私の中ではストンと落ちる話である。

たとえばボランティア活動を通じて、世の中のためになることをする、というのが究極目標だとしよう。その目標を達成するために、A,B,C・・・という活動があるが、たまたま外的要因でAは遂行できなくなった、というようなケースを考えると分かりやすいだろう。

「人に強くなる極意」とは何だろうか?私はそれは結局のところ「自分に強くなる」または「強い自分を作る」ということに他ならない、とこの本を読んで改めて感じた。その強い自分は「他者理解力のような知性」と「持続する意思とあきらめのバランス」を磨くことで作られるのである。

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