金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

韓国にとって日本の集団的自衛権が必要な理由

2014年07月05日 | 国際・政治

今週(7月3-4日)中国の習近平国家主席が訪韓し、朴大統領と「日本の右傾化問題」(中国メディア)などについて意見を交換した。中国としては韓国政府に日本政府批判をして欲しかったようだが、韓国政府は集団的自衛権に関する憲法解釈の変更に関する閣議決定を黙認する形をとった。

恐らく韓国政府が朝鮮半島の安全確保のため、日本が集団的自衛権を行使できるようにすることが必要だということを(嫌々ながらも)理解しているからなのだろう。

WSJに東アジアの軍事問題の専門家ブルース・バーネット氏がWhy Japan's Military Shift is necessary for South Koreaという一文を寄せていた。

以下はその記事のポイント

  • 今週日本は集団的自衛権政策を採用した。多くの韓国人はこれは日本の軍備化の始まりになる可能性があると懸念し、なぜ米国が日本の新しい政策を支持するのか疑問に思っている。
  • 米国は日本の集団的自衛権が韓国と北東アジアの防衛上極めて重要だと判断したので、日本の集団的自衛権を支持する。
  • 米国は北朝鮮の韓国に対するいかなる侵略に対して韓国を防衛する。まずは北朝鮮に侵略を思いとどまらせる抑止力(維持・向上)であるが、抑止力が働かず北朝鮮が韓国に侵攻してきた場合、米国は韓国に軍事力を展開する必要がる。
  • 恐らくその場合、イラク戦争の2倍の兵員を動員する必要があり、米国は日本の空軍基地や軍港を使うことを計画している。なぜなら韓国の施設は稼働能力に限界があり、また北朝鮮から攻撃を受けやすいからだ。
  • それと引き換えに米軍は在韓日本人の避難・退去を支援する。
  • 集団的自衛権容認までは、日本の憲法は米軍のこのような展開を技術的にオーソライズしてこなかったが、集団的自衛権の容認で可能になるだろう。
  • 地域の歴史を考慮して、日米両国とも紛争状態に入っている朝鮮半島に日本の自衛隊を動員することは考えていないだろう。しかしそれでも日本の軍事力は役に立つと思われる。
  • たとえば日本の海上自衛隊が北朝鮮の船舶が輸送する武器やその他の禁輸品を差し押さえる行動に関与することだ。それは北朝鮮のから武器が国外にいる北朝鮮の特殊部隊やテロリストの手に渡ることを防止するものである。
  • 端的に言うと集団的自衛権によって、日本は韓国と地域の安全保障をサポートする責任を引き受けるのである。

これは「集団的自衛権の韓国に与えるプラス面」という観点から書かれた記事なので、当然日本の内閣が日本国民に行っている説明とは異なる。

だが書物が一度作家の手を離れて出版されると、作者の意図を超えて一人歩きする場合があるように「集団的自衛権」も一人歩きを始めたのである。

例えば言葉である。内閣が行ったことは「集団的自衛権に関する憲法解釈の変更」なのだが、バーネット氏はThe govenment adopted a collective self-defense policy「政府は集団的自衛権政策を採用した」となり、記事のタイトルはJapan's Military Shift(日本の軍事的方向転換」になるのである。

直截で事実だと思うが、言葉が海外を一人歩きすることに若干懸念を覚えない訳でもない。

もっとも日本政府が「日本が韓国や地域の安全保障にコミットした」ことを国民に明示的な形で伝えていないことの方が問題なのだろうが。

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【イディオムシリーズ】Take a hit

2014年07月05日 | 英語

Take a hit は「打撃を受ける」「(評判・人気が)急速に落ちる」という意味だ。

WSJに老後資産運用学の専門家が「退職者は過大な投資リスクを取っているか?あるいは取っているリスクが少な過ぎるか」という記事を寄せていた。

その中に次の一文がでていた。

For those with enough assets to meet their spending goals, the benefits of doubling their wealth again would pale in comparison to taking a significant hit to their portfolio and no longer being able to meet their goals.

「支出目標を満たす十分な資産を持っているものにとって、資産を倍にする利益は,ポートフォリオが激しいダメージを受けて、支出目標を達成できなくなることに較べれば見劣りするだろう」

この専門家Wade Pfau教授(アメリカン大学 金融・退職準備学)は、退職者が資産運用でリスクを取り過ぎているか、逆にリスクを取り過ぎていないかは一概にいうことはできないという。

この問題は「退職者にとってリスクとは何か?」ということに深くかかわっている。同教授は「我々が一般にリスクと考える単年度ベースのボラティリティ(株価の変動)は実は退職者にとってはリスクではなく、本当のリスクは自分のライフスタイルを満たすことのできる資産を確保できないことだ」という。

長年デフレを経験してきた日本ではインフレリスクといってもピンとこない。だが仮に3%のインフレが持続すると資産価値は23年で半減する。このリスクは銀行預金でカバーすることができない。このリスクをカバーするためにはインフレと連動する資産を保有しなければならない。

一方各種の年金やインフレ連動国債などで老後の収入や資産のインフレヘッジが十分確保できている人にとってそれ以上にリスクを取る必要はない、と同教授は諭している。

★   ★   ★

基本的にはそのとおりだと思う。

ただし株式投資のようなリスク運用は配当により毎年の収入を押し上げる効果がある。たとえば1千万円をほぼ無利息に近い銀行預金から3%の配当がある株式投資に振り向けると年間30万円(税前)の配当収入がある。この30万円を「趣味」に使うとライフスタイルがその分変わってくる可能性がある。

過度のリスクテイクはダメだが、老後は多少の不労所得を稼ぐリスク運用をしても良いと私は考えている。株価変動に一喜一憂しないですむ範囲の話だが。

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