金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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【イディオムシリーズ】Off the grid(図書館の話)

2014年07月13日 | 英語

Gridは魚などを焼く網という意味がある。そこから発展して格子状のものをgridという。Off the gridのgridは送電線網のことで、off the gridとは「送電線網等の公共サービスにつながっていない家」というのが一般的な意味だ。

電子図書館の問題を調べているうちにPew Reseach Centerが米国の図書館の利用者に言及している調査に出会った。

(電子図書館に関するエントリーはこちら http://blog.goo.ne.jp/sawanoshijin/d/20140713 )

Pew Research Centerは図書館利用者を熱心なユーザ、中程度、あまり使わない、個人的には一度も使っていないの4タイプに分けている。

一度も使っていないグループはDistant Admirers(遠くからの賞賛者)とOff the Gridに分類される。

Pew Research CenterはOff the Gridグループを「色々な意味でコミュニティや社会的生活から隔絶した連中で、このグループの多くの人は田舎に住み、インターネットを使う人は56%に過ぎない。大部分の人の世帯収入は極めて低く教育レベルも低い。その数は人口の4%」としている。

従ってここでいうOff the gridの意味は「地域活動や社会生活から孤立した人々」意味だ。米国の地方都市では図書館が市の中心部にあり、コミュニティセンターの役割を果たしているところが多い(日本でも公民館と同居しているようなところは同じ)。つまり図書館をよく使う人は地域とつながっていて、図書館を全く利用しないような人の中には地域社会から孤立した人がいるということだ。

Distant Admirersの割合は10%。このグループは「自らは高齢などの事情により図書館を利用しないけれど家族が利用しているのを見て図書館にはプラスイメージを持っている」というグループだ。

団塊の世代の退職とともに日本でも図書館の利用者が増える傾向にある。Pew Research Centerの調査によると図書館の熱心な利用者は、コミュニティ活動やスポーツ活動に熱心で家族や友人と社交的な関係を築く傾向が強いということだった。日本の図書館愛好者にも同様の効果を期待したいものである。

★   ★   ★

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電子図書館は身近になるか?

2014年07月13日 | うんちく・小ネタ

今日(7月13日)に日経新聞朝刊に「電子図書館、身近になるか」(「活字の海で」)という囲み記事があった。

記事の概要は次のようなものだった。

  • 一部の図書館で電子本の取組は始まっているが、まだあまり利用されていない。
  • しかし米国で図書館システムを手掛けるオーバードライブ社Over Driveと日本のメディアドゥが提携して潮目が変わる兆しがある。
  • 今秋の本格スタートに向けて試行中の札幌中央図書館は「利用者の反応は前向きで市民ニーズにあっている」とみている。電子図書館が身近になる時代はそう遠くはないかもしれない。

だがこの推論は正しいだろうか?少なくともポジティブな情報だけを拾っているのではないだろうか?

たとえば私が住んでいる西東京市は「当面、西東京市図書館への電子本導入は喫緊の課題としない」ことを西東京市図書館協議会が2013年4月に決定している。

同協議会によると「全国の同規模自治体に設置された公立図書館の中でも貸出数などが全国トップクラスの活発な図書館」だそうだから、同クラスの図書館が同じような態度を取っている可能性は高いのではないか?と推測している。

西東京市が電子本導入に消極的な理由は次のとおりだ。

  • 最適な利用モデルを確定することができない
  • コンテンツの未成熟
  • 電子書籍環境の未整備
  • 市民のニーズの低さ

この4番目の「市民のニーズの低さ」が同協議会も指摘しているように最大の理由なのである。

簡単にいうと、電子本を自分で買って自分の端末で読むという人が増えてこない限り、図書館で電子本の貸出体制を作っても貸出ニーズは増えないだろう。

オーバードライブ社の話がでたついでに、米国の公立図書館における電子本貸出の状況をLibrary Journalの調査資料で調べてみた。

それによると2013年現在で公立図書館の89%が電子本の貸出を行っていて、未実施の図書館の20%も来年には電子本貸出に取り組むといっているので、9割以上の図書館が電子本貸出に取り組むことになりそうだ。

電子貸出本のタイトル数は顕著に増えていて、2010年には813だったものが2013年には7,380に拡大している。

中身は74%が小説で26%がノンフィクションだ。

そのアメリカの図書館で電子本の普及の最大のネックは、大手出版6社の半分が図書館による貸出に同意していないことだ。出版社が貸出に同意して初めてオーバードライブ社のような業者が貸出ライセンスを得ることができる。このため図書館は人気の高い電子本をそろえることが難しいという問題を抱えている。もっともペンギン社がオーバードライブ社他1社に貸出本のライセンスを与える予定、と発表しているからこの問題も動いていく可能性はあるだろう。

その次のネックは図書館におけるヘルプ問題で71%がこの問題を上げている。図書館利用者から「私の端末に電子本をダウンロードするのをヘルプして欲しい」という要請があるというのだ。電子本で10年位先行している米国でもまだまだこのような問題はあるのだ。

次に電子本の購入予算をみてみよう。2013年現在全米平均でみると、図書購入費の6.1%が電子本の購入に充てられている。これは2010年の1.7%に較べると顕著な伸びで、2018年には倍以上の13.2%まで拡大すると推測されている。

図書館一つあたりの図書購入費は平均で105,938ドル(約10.7百万円)。

自治体の図書予算を増やさない限り、電子本の購入が増えると紙の本を購入する予算が減ることになる。

以上のようなことを踏まえて、電子図書館が近い将来身近なものになるかどうか?と判定すると私は「身近なものにならない」と考える。

その最大の理由はユーザニーズが低いことだ。ユーザニーズが低い限り電子本に予算を振り向けることはできないし、当局のその判断は正しいと思う。

まず自分のお金を出して、電子本を購入し読む人が増えて、公立図書館に「電子本を購入して欲しい」という声が高まらない限り、一般的には図書館で電子本を導入する動きは高まらない。

日本で電子本が普及しないしない理由の一つに私はアマゾンのキンドル本がPCで読むことができないこともあるのではないか?と考えている。

米国の図書館電子本を読むのに使われているデバイスの比率は次のとおりだ。

電子本専用端末86%、タブレット82%、スマートフォン51%、PC33%、図書館のPC4%(重複あり)。タブレットが急速に伸びているので専用端末を凌駕する日が近いかもしれない。

これに較べて日本ではアマゾンのキンドル本はPCで読めないなど制限が多い。そのような制限が外れることと、タブレットのように電子本を読みやすいデバイスが普及することが電子本普及の条件の一つだろう。

個人的には私は電子本のユーザであり、近くの図書館でも電子本の貸出が行われることを希望しているが、現状では限られた予算を電子本購入に振り向けることはできないという図書館の判断は正しいと考えている。日経新聞の記事は楽観的過ぎると思われる。

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