私たちは自分のしたいことをして暮らすことを幸せだと感じている。そして自分のしたいことに他人がペースを合わすことを望んでいる。私もご多聞に漏れない。
しかし時には他人の喜びのためにお付き合いすることもある。そして自分の好みを曲げても、喜ぶ相手の顔を見るとそれはそれで良かったと感じている自分を発見する・・・・ 。大袈裟にいうと昨日はそんな一日だった。
昨日(7月26日)の朝は名古屋のホテルで迎えた。8時頃家族四人で来日しているネパール人の友人から電話が来て、今横浜だけどきょう東京に行く、夜のバス便で宝塚に行くけれど半日時間があるから都内の観光案内をお願いしたいという。OKして11時半に東京駅で待ち合わせをした。
それから同じホテルに泊まっている女性税理士さんのご希望に合わせて、名古屋名物の小倉トーストを食べに出かけた。
私より少し年配の税理士さんとは昨日から一緒に相続学会のセミナーのお手伝いに名古屋に来ていたのだ。「朝から甘いあんこはどうかな?」と思ったけれどお付き合いして頂くと結構おいしかった。食べたのは駅から少し南に行った笹島交差点のリヨンという店だった。
その後新幹線で東京に向かい、11時30分のネパールのBさん一家とステーションホテル前で出会った。旅行代理店を経営するBさんとは、トレッカーとLand operator(現地の旅行会社)のボスという関係を超えた一種の友人になっていてカトマンズでは自宅に夕食にも招待されている。
彼らが東京にくれば、おもてなしをするのは当然である。しかし急な話だし、東京は2回目というBさんを除いて、東京は初めてというご家族にどこを案内するのが良いかアイディアが思いつかないので、はとバスツアーに乗ることにした。
その前に夜のバス便確保をしなければならない。高速バスのチケット売り場は八重洲口の南側だ。そこで一度八重洲側に行き、バスのチケットを買って貰い、乗り場を案内。それから又丸の内側の、はとバスチケット売り場に向かった。八重洲=丸の内を結ぶ通路は東京駅の北側にしかないので、かなりの大回りだ。南側にも自由通路があると助かるのだが。
はとバスツアーは午後1時出発の5時間コース(皇居前・浅草・東京タワー)に空席があったのでこれを予約。はとバスには英語ツアーもあるのだが、この時間帯にないので、日本人向けバスに乗って貰う。大人一人@5,700円これはご招待だ。軽食の後バスに乗り込むと完全に満席。結構ご高齢の方が多いのに驚く。この猛暑の中、東京見物とはご苦労様である。
Bさんが「皆東京以外の人か?」と聞くが答は I don't knowである。本当に分らない。東京の人もはとバス観光を使うという話は聞くからだ。
さてバスはまず皇居前広場へ。
Bさんは「日本人は天皇を尊敬しているのか?」と聞く。答はYes, definitely.
ネパールでは今世紀初めに国王一家が惨殺されるという事件があったり、6年前には王制を廃止しているから「国民が天皇を尊敬しているかどうか」疑問だったのだろう。
30分ほど炎天下を歩いて、楠木正成公の銅像前のバスに戻った。
13歳のBさんの息子に「
正成公が後醍醐天皇を救った忠義のサムライだ」と説明してあげると、彼はfactかbeliefかと質問してきた。Factだけれど戦前に政府が美化したという私の説明を彼が理解したかどうかは不明だが。
この13歳の少年に将来の進路希望を聞くと「東京大学で遺伝子工学を学びたい」と明確な答えが返ってきた。ただし奨学金を貰える枠が5人だそうで、かなり勉強をしないといけないようだ。実はネパールの大学進学率は日本より高くて7割ぐらいではないかということを聞いたことがある。
輸出産業が育つ見込みが乏しいネパールでは、若者は学力をつけて国外で働こうとする。ネパールの若者たちも大変だが、彼らと直接・間接に競争する日本の若者にも大変な時代である。
浅草浅草寺の話は割愛して、最後の東京タワーの印象を書こう。東京タワーに登ったのは30年位前だったので、機会があればもう一度行きたいと思っていたところ、こんな形で機会が巡ってきた。Bさん一家も東京タワーからの展望を楽しんでいた。なによりも涼しくて気持ちが良い。
夏空に赤い足を踏ん張って立つ東京タワーにはスカイツリーよりある種の人間味がある、と感じた。
午後5時50分バスは東京駅に戻った。ここでBさんご一家とはサヨナラをした。
暑い半日のお付き合いだったし、予定外の出費でもあった(東京は外国の友人を接待するには食事代など総てのものが高過ぎる)。
だがBさんご一家が短い東京観光を楽しんでくれた、とすればそれはうれしいことである。また13歳の息子が東京で勉強をしようという気持ちを更に高めて勉学に励む機会となればこれまた素晴らしいことである。
「与える方が貰うより幸せである」というのは聖書の言葉だ。 It is more blessed to
give than to recieve.が原文。Blessedには「幸せ」の他、祝福されている、恵まれているという意味がある。
多少なりとも知人・友人が喜ぶことに力を貸すことができた一日は気持ちが良かった。
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