金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

身近で起きたオレオレ詐欺(未遂)事件

2015年03月13日 | うんちく・小ネタ

NHK総合チャンネルで毎夕6時40分頃から、橋本アナウンサーが警戒を呼び掛けているオレオレ(振り込め)詐欺事件対策。しかし減らないどころか、被害金額は史上最悪レコードを更新しているようですね。

このオレオレ詐欺、被害に遭うのはご高齢の方か?と思っていましたが、つい最近私より少し若い男性の友人が、もう少しで被害に遭うところだったという話を聞きました。この友人は現役で働いている人ですから、高齢者でなくても、誰しもが被害に遭う可能性があるのだな、と認識を新たにした次第です。

話のあらすじはこんなことでした。

ある日友人の携帯電話に息子さん(と名乗る男)から「上司と衝突して少し落ち込んでいる。落ち込んでいたためか、トイレに携帯電話を落としてしまい、電話番号を変えたので、新しい電話番号に上書きして欲しい」という電話がありました。友人は息子さんの声が少し低いな、と思ったそうですが、落ち込んでいるからなのだろうと判断して、電話番号を上書きしました。

それ数日後、また息子さん(と名乗る男)から、「会社の経理担当の友人と二人で株式相場を張っていたが、損を被り会社の金に手を出してしまった。近々監査が入る見込みなのでそれまでに穴埋めをしたい。親父、少し助けてくれ」という電話が入りました。

友人がいうのには「息子が相場を行っていることは以前聞いたことがあるので、話をすっかり信じてしまった」ということです。息子(と名乗る男)は「すぐにでも自宅にお金を取りに行きたい」と言ったのですが、友人は「手元に大金はおいていないので、銀行から振り込む」と言って、押取り刀で銀行に出かけたそうです。

銀行の窓口で大金を送金しようとすると窓口の女性が「オレオレ詐欺の可能性がありそうですね。再度息子さん(と名乗る男)に電話して、本人でないと分らないことを尋ねてみてはどうでしょうか?」とアドバイスしてくれました。

そこで友人は息子さん(と名乗る男)に電話をして「生年月日を確認」したところ、プチと切られてしまったということです。こうして友人は被害を免れることができました。

幾つかの教訓があると思います。

第一に「携帯電話を通して、息子さんの声を識別することはできない」ということです。

第二に「人間はヒューリスティクスの影響で、合理的な判断ができなくなる場合がある」ということです。ヒューリスティクスHeuristicsとは「発見手法」「経験則」という意味ですが、行動経済学では「不確実なことがらに対して判断を下す必要がある時、明確な手がかりがない場合に用いる便宜的な方法」という意味で使われます。

もう少し説明すると、人間は二つの情報処理システムを持っていて、システムⅠは「直観的、感情的、迅速で労力のかからない」判断システムです。もう一つのシステムⅡは「分析的、統制的、労力を要する」判断システムです。

私が想像するに、この時友人は「息子さんが相場を行っている、という一つの情報に依拠して、損をして会社のお金に手を着けることもありうる」と直感的な判断を下したのではないか?と推測しています。

私自身はオレオレ詐欺的なものに遭遇したことはありませんが、山道を歩いている時などに、「若い時に較べて、道迷いをするリスクが高まっているな」と感じることがあります。幸いなことに今のところ直ぐに気がついて余り大きな問題には至っていないのですが、脳が疲れることを嫌がって、統合的な判断システムではなく、直観的な判断システムを使うため、このようなことが起きるのではないか?と考えています。学問的根拠はありませんが。

仮に私の仮説が正しいとすると、中高年登山者に道迷いが多いことと中高年がオレオレ詐欺に遭うことが多いということには、共通点があるということになります。

何か難しい判断を行う時には「今自分はシステムⅠを使っているのかシステムⅡを使っているのか?」と自問すると良いかもわかりません。もっとも傍目(おかめ)八目的な話でその場で自分が冷静は判断ができるという自信はありませんが。

 

 

 

コメント (1)
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