昨日の日経新聞(夕刊)によると、28日に発表される1月の新規住宅着工件数は市場予想では前月を上回るということだ。前月を上回るとすれば、7カ月連続のプラスとなる。
昨年1年間の新規住宅着工件数は96万7千戸で3年ぶりの高水準だった。新築物件が増える背景には、低金利の持続と資金運小先に苦しむ金融機関の超積極的な住宅ローンやアパートローン貸出攻勢がある。相続税対策から更地にアパートを建てる人が増えていることも着工件数増加の一因だ。
米国などでは景気先行指標として注目される新規住宅着工件数。着工件数の増加は景気上昇の兆しとして好感されるが、果たして日本でも同様に考えてよいものだろうか?
日本では住宅ストック数(約6,060万戸)は、既に総世帯数(約5,250万戸)を15%以上上回っている。その結果空き家の数は820万戸に達している。撤去される空き家の数は年間10万戸程度と推定されるので、高水準の新規着工が続くと、年間80万戸以上の住宅が純増することになる。
野村総研は約15年後に空き家の総数は、2,170万戸に増加し、空き家率は30%を超えると推計している。このような推計は大規模な天災や戦争がない限り、ある範囲で当たる確率が高い。
空き家が3割にあると言っても全国一律に「3軒に1軒空き家がある」という状態が発生する訳ではない。大都市の交通便利な県内では比較的空家率は低い状態が続くだろう。しかしその分大都市郊外や地方では深刻な空き家問題に直面する。
空き家の増加は地区環境の悪化につながり、当該地域の物件価値を低下させ、物件の市場性を悪化させるという負のスパイラルを生む。
それは行政コストの増加とともに、個人にも国にとっても確実に負の財産になる。
空き家問題については国交省等が施策を講じ始めているが、国全体としては、政策の整合性が全くとれていないと思う。
空き家を減らすにはまず新築物件を抑えるような政策を取るべきなのだ。具体的には「借家を建てると相続税の評価額が大幅に安くなる」といった税制を改正するべきなのである。
日本では新規住宅着工件数はプラスの経済指標ではなく、長期的な経済破綻を示唆する不安指数ではないか?と私は考えている。