金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

アメリカの消費者は経済により楽観的~ニューヨーク連銀レポートから

2020年06月09日 | うんちく・小ネタ

WSJは昨日発表されたニューヨーク連銀のレポートによると、「インフレ率は4月が2.6%から先月は3%に上昇しているが、消費者は経済の先行きにより楽観的になっている」と報道していた。

「アメリカ人は楽観的過ぎ、日本人は悲観的過ぎる」とは昔からよく言われているところ。日本人の感覚からいうと2百万人近い人がコロナウイルスに感染し、11万人以上がコロナウイルスで死亡し、7人に1人が失業している状態で「楽観的」になれるのはおかしいと思う人が多いだろう。

逮捕された黒人が警官の拘束により死亡した事件に対する抗議デモが各地で起こり、首都ワシントンでは週末に数万人が抗議デモに参加した。

そんな中で先週金曜日に発表された雇用データが事前予想より良かったことに株価は急騰し、消費者のセンチメントは楽観ムードが高まっている。

この楽観の背景には2つのことがあると私は考えている。

一つはアメリカ人のメンタリティが楽観的にできているという点だ。これは後述する。

もう一つは「社会や雇用の仕組みが経済環境の激変に抵抗せず、破壊的変革を受け入れることで成長する」ようになっていることだ。

例えばキンドルのような電子本が流行りだすと、伝統的な本を売っている書店が大規模なリストラや倒産に追い込まれるという具合にだ。この時企業も政府も生き残れない業態を救済するような動きはとらない。だから失業者が顕在化する。日本では雇用を守る傾向が強いから失業者は顕在化せず、社内失業者が膨らむ。そしてゾンビ企業がいつまでも淘汰されずに存続する。

歴史を振り返ると日本にも「破壊的変革を受け入れて成長した」時代はあった。一つは明治維新だ。ペリーの来航に端を発した外圧の激震を受けて、封建制度は破壊され、仏は寺から叩き出された。

もう一つは第二次大戦の敗戦だ。一夜にして鬼畜米英と書かれた教科書は黒塗りされ、農地は開放され、アメリカ万歳となった。これまた価値の破壊的変革である。

だが平和な時代が70年以上続き、社会の担い手が高齢化すると破壊的変革を受け入れることが出来なくなってしまった。個人番号制度は世界の中で類を見ない程普及が遅れ、緊急時に困窮者に迅速な支援ができない使えない制度であることを世界に露呈した。

「現状を捨てることは将来を広げることだ」という考え方が広くアメリカ人に浸透している可能性がある。今世紀の初め頃、アメリカの社会心理学者クランボルツ博士は「キャリアの8割は偶然決まっていくのだから、行き詰った時は新しい世界に飛び込めばよい」というキャリア理論を展開し、IT革命に翻弄されたアメリカ人の支持を得た。

クランボルツ博士は偶然を味方につけるには「好奇心」「冒険心」を持ち「柔軟性」「持続性」のバランスを保ちながら「楽観的」であることが大事だと説いた。

この5つの徳性の中で敢えて一つを選ぶとすれば私は楽観的であることをアメリカ人の美質としてあげたいと思う。

楽観的であれば、新しいことにチャレンジできるし、環境の変化を受け入れることができる。

コロナウイルス騒動の後、変わることができる可能性が高い国がアメリカである。各地で起きているデモも変わろうとしている社会のうねりと私は考えている。

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米株を牽引したのはFAANG+マイクロソフト

2020年06月09日 | 投資

昨日(6月8日)米国株は金曜日の好調な雇用統計の追い風を受けて続伸した。

S&P500は年間を通じてプラスに転じ、ハイテク銘柄が多いナスダックは約4カ月ぶりに新高値を更新した。ナスダックは3月末の安値から44%上昇している。一般に安値から20%上昇すると強気相場入りといわれるからナスダックは完全に強気相場に入っている。

簡単な縮図を書くと、アップル・アマゾンなどのFAANG銘柄とマイクロソフトがナスダックを牽引し、ナスダックがダウやS&P500をリードしてきた。そしてここにきて出遅れ感のあった輸送・金融などが値を上げているのが米国株の構造だ。

ある意味では米国株は素直を分かり易いということができる、と私は考えている。

さてこれまで相場を牽引してきたFAANGだがまだ上昇余地はあるのだろうか?

それは投資家がそれぞれ考えるべき問題だが、アナリストのコンセンサスは下記の表のとおりだ。

アップルは値を飛ばしてきただけに目標株価を達成したと見る向きが多く、マイクロソフトにはなお上昇余地が大きいとみるアナリストが多い。

時価総額で世界第2位の地位を争うマイクロソフトとアップル。それを追いかけるアマゾンやアルファベット(グーグル)。

個別銘柄の良し悪しは分からないけれど、IT大手に成長余地あり、と考える人には東京市場で買うことができるナスダックETF(証券コード1545)などは便利な投資ツールだ。

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