金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

徒然草を読む(19)~投資のコツは負けないこと

2020年06月10日 | ライフプランニングファイル

このところの米国株の戻りは著しい。コロナウイルス感染拡大が顕在化した2月3月の株価急落に目を見張るものがあったが、4月および今月の急騰にも目をむくものがある。

「2月に株を売っておいて手持ち現金を増やし、3月の下旬ごろ底値で買えば一儲けできたのに」と後講釈を思いつく人も多いはずだ。

だがこれは後になって言える話で実際には暴落の前に株を買ったり、暴落した後に株を売ることは多い。これは欲と恐怖心から相場を見る目が曇るから起きることだ。

相場の格言に「名人、天井売らず底買わず」という言葉がある。相場の名人は最高値で売ろうとしたり、最安値で買おうとせず、そこそこのところで仕掛け、そこそこのところで手仕舞い、手堅く利益を取るという教えだ。

徒然草第百十段の双六の名人の話もこの格言に通じるものがある。

「双六の上手といひし人に、その手立てを問ひ侍りしかば、『勝たむと打つべからず。負けじと打つべきなり・・・』と言ふ」

双六、これは現在子供が正月に楽しむような双六ではなく、バックギャモンのような賭け事なのだが、その名人の教えは「勝とうと思わず負けないような手を打つべきだ」というものだった。勝とう、勝とうと思うと前のめりになり平常心を失う。しかし負けないような手を打とうとしていると冷静さが保たれ相手がミスを犯して結局勝つことができるという教えだ。

プロのファンドマネージャーの場合には相手がある。それは日経平均やS&P500という市場平均である。少なくとも市場平均に負け続けているようでは資産運用を委託してくれるお客さんはいなくなる。

だが我々一般人は別に市場平均と競争する必要はない。我々が目指すものは、自分の将来を支えるために無理のない範囲でじっくり資産を増やすことである。もし予定より資産が増えれば少し贅沢をすればよく、予定に届かない時は少し節約をすればよいのである。

勝とうと思うわず負けないような手を打て、という徒然草の教えは資産運用の心構えとしても有用だと思った。

 

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