金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

パンデミック後は転職で給料アップが顕著~アメリカの話だが

2022年08月10日 | 資格・転職・就職
 前のブログでアメリカのインフレ問題の焦点はコモディティ価格の上昇から賃金上昇問題に移っていくのではないか?と書いた。
 勤労者の賃金が上昇するのは、雇用市場で求人数が求職者数を上回っているからである。端的にいうと企業が高い賃金を払ってでも必要な人材を確保しようと考えるからである。一方労働者もこの流れを利用して、少しでも実質賃金が高い雇用先に転職する傾向を強めている。
 Rew Research Center のHPにMajority of U.S. Workers Changing Jobs are seeing Real wage Gainsという記事がでていた。多くの転職者は実質賃金の上昇を得ているという内容だ。
 記事によると「大辞職時代」は2022年も継続し、辞職率は1970年代並みに高い水準に達している。今年1月から3月の平均離職率は月2.5%頭数にして約4百万人だ。単純に年率換算すると離職率は年30%に達し、その数は48百万人になる計算だ。
 2021年4月~2022年3月の間に転職した人の60%は実質賃金が上昇した。一方この間に転職しなかった人で実質賃金が上昇した人は47%に留まった。もっともその前の1年間(20年4月~21年3月)については転職組で賃金が上昇した人は51%で転職しなかった人は54%と若干ながら転職組が不利だったが。
 いつまでこのような傾向が続くか分からないが、パンデミックを理由に労働市場から出ていく人もいるので、当面求職者側有利なマーケットが続く可能性が高そうだ。
 ところで日本の正社員の転職率については2021年で7%というデータをマイナビが示している。6年間で過去最高ということだ。
 賃金もモノの値段やサービス価格と同様、基本的には需要と供給で決まっていく。ある会社が非効率な経営の結果、従業員の賃金を上げることができない状態にあったとしよう。そこに新しく参入してきた会社が効率的な経営や画期的なマーケッティングを行うため既存の会社から優秀な社員を高い給料で引く抜くような動きをすれば、賃金の上昇と業界の生き残り競争が激しくなるはずだ。
 これがアメリカの社会。一方転職リスクを取らない社員が多く、賃金も上がらず、業界の競争も激しくならないのが日本の社会だ。賃金水準の引き上げと競争による経済活性化を推進することを是とするならば、転職を容易にする各種の施策を講じるのが良いということになるだろう。
 
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今日発表の米国CPI、鈍化が予想されるが次の焦点は賃金へ

2022年08月10日 | 投資
 今日(8月10日)発表される予定の米国7月の消費者物価統計は、事前予想では6月より上昇率が鈍化することが予想されている。
 ダウジョーンズの事前予想では、前月比0.2%の上昇で、年率ベースでは8.7%だ。6月がCPIが前年比9.1%だったのでもし予想通りの物価上昇率になるとインフレはピークアウトした考える人が増えるだろう。
 米国の消費者物価を押し上げている要因は4つある。第1は原油や食料などコモディティ価格の上昇だ。第2にサプライチェーンの乱れによる供給不足が挙げられる。第3は住宅価格の上昇だ。これは家賃の上昇を通じてCPIを押し上げる。第4は賃金の上昇だ。7月の時間給は前年同月比5.2%上昇した。今年に入って毎月のように賃金は前年比5%以上上昇している。
 賃金が上昇する最大の原因は雇用市場がタイトだからだ。賃金が上昇すると勤労者の財布の紐が緩むので、インフレを許容しやすくなる。
 足元のコモディティ価格を見ると、たとえばガソリン価格は先月1ガロン4.72ドルだったが8月初旬には4.06ドルに低下している(AAA調べ、WSJによる)。食料品についても価格低下傾向なので7月の消費者物価指数が前月よりも鈍化する可能性は高い。
 一方今月初めの雇用統計が示したように、雇用市場は堅調で求人数が求職者数を大きく上回っている。インフレのピークアウト→政策金利引き上げのスローダウンを見極めるには、賃金動向がポイントになるだろう。
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