少し前に顧問先で「これからのIT企画に必要な人材・スキルは?」ということについて意見を交換した。
多かった疑問は「IT企画をするにはどれ位のITスキルが要るのか?」「ITスキルがあればIT企画ができるのか?」というものだった。
これに対する私の回答は「ITの対象分野~ネットワーク・アプリケーションなど~で求められるITスキルは異なるが、会社の目指すところ~事務処理の合理化とか情報共有とか~をきちんと理解し、ITもそれを実現する一つのツールととらえる経営企画的センスが必要」というものだった。
しかしITスキルと経営企画的センスを備え持つ人材というのは沢山いる訳ではない。だからスキルとセンスを備え持つ人がいると重宝されるのである・・・などと考えていたところ、WSJでThe 'Hybrid'skills that tomorrow's jobs will requireという記事を目にした。
記事の内容は私が考えていたこととほぼ重なるが、給与面の具体的データなどがわかるので記事の内容をざっと紹介したい。
- 人間の脳は素晴らしいコンピュータで、二つの半球に分かれている。左脳は論理的・分析的思考を担い、右脳は直観や創造性を担う。
- ハイブリッド・スキルという概念は左脳と右脳がともに有効に活用された状態、つまり論理的・分析的手法に精通しながら直観力や創造性を活用している状態を指す。
- ボストンの労働市場分析会社Burning Glass Technologiesによると、同社は今後10年間の雇用の伸びを10%と予測しているが、ハイブリッド・スキルが期待される仕事については21%の伸びを予測している。
- 給料の面では、典型的なマーケッティング・マネージャーの稼ぎは年7万1千ドルだが、SQL(データベース・プログラム)に長けたマーケッティング・マネージャーの場合の年収は10万ドルである。つまりSQL技術が41%のプレミアムを生んでいる訳だ。
- 一方技術レベルをアップデートできない人には仕事のチャンスが減っている。2013年に広告関連で分析技術が求められた割合は、20ポジションに1つだったが、2018年には13ポジションに1つに高まっている。
- ハイブリッド・スキルについては、ロボットによる自動化に取って代わられるリスクは12%で、全職業の42%に較べるとはるかに低い。
私がサラリーマンをしていた頃は、ハイブリッド・スキルという言葉はなかったが、一つの分野で専門性を高めるとともにジェネラリストとしても幅を身につけろ、と教えられたことはあった。
これも右脳と左脳双方を使うという意味ではハイブリッド型なのだが、ここで紹介したハイブリッド・スキルとは少し異なるようだ。
どう異なるか?というとハイブリッド・スキルでは異なる二つの分野で高い専門性を求められる点だ。
なおハイブリッド・スキルは大学で学ぶことができるものではない。つまり会社である実務に従事しながら(あるいは従事した後)学習して学ばなければならないものである。つまり将来ロボットに負けないためには生涯学習が必要で学習内容はハイブリッド・スキルの獲得と要約することが可能かもしれない。
ハイブリッド技術の一つはデータ分析技術などデータサイエンスに関わるものが多いようだ。マーケッティングやモノづくりである程度経験を積み、専門性を持って「定性的判断」ができるよになった人が「定量的分析」を行って、自分と組織の判断の客観性を高めるというのが一つのパターンだろう。
ハイブリッド・スキルは働き方改革の一つの具体的目安かもしれない。
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