今日武蔵村山のイオンモール内にあるワーナー・マイカルに「母(かあ)べえ」を見に行った。今まで大泉学園のシネコンに行くことが多かったが、映画の後の食事の選択が少ないので今日はイオンモールに行くことにした。
「母べえ」の詳しい内容を知らないまま吉永小百合さんの映画だということで見に行く。劇場内は私より少し年齢が上のカップルが多い。映画の舞台の野上家では夫を「父(とう)べえ」妻を「母(かあ)べえ」娘達の名前をとって「初べえ」「照べえ」と呼び合っていた。優しい家族である。坂東三津五郎演じる父べえ、野上滋は治安維持法違反で検挙される。吉永小百合演じる母べえは「夫と別れろ」という父の言葉にも負けず、代用教員として働きながら二人の子供を育てる。
太平洋戦争突入後暫くして父べえは獄死する。母べえは悲しみに浸るひまもなく、働き子供達を育てる。父べえの教え子で母子を支えた山崎(浅野 忠信)も南方戦線に向かう船の中で魚雷を受けて死亡する。
時は流れ映画の最後の場面は母べえが病院で死ぬ場面である。次女は母べえに「死んだら天国で父べえに会えるよね」というが、母べえの答は「生きて父べえと会いたかった」というものだった。ここで次女が泣き崩れ、私も思わず目頭が熱くなった。母べえが何年も何十年も思い続けていた無念、それが父べえの死なのである。
戦争は常に悲惨だ。思想統制も悲惨だ。それにしてもあの頃の日本を覆っていた狂気は一体何だったのだろうという思いで私は映画館を出た。「良い映画だったけれど、皆死んでしまうので救いのない映画だったわね」とワイフが言った。