金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

暑さのせいか?年齢のせいか?

2011年08月22日 | うんちく・小ネタ

この週末は前線が南下し雨が続いた。このため涼しい日が続いたが、それまでは猛暑で閉口した。涼しい雨の休日は読書に限ると思い昨日図書館に出かけようとした。ところが貸出用の図書館カードが見当たらないのである。ひと通り心当たりを探したが、見つからないので「再発行をお願いしよう」と思い近所の図書館に出かけた。

係の女性に「再発行をお願いします」というと、「今日は電話番号でご希望の本をお貸ししますから、もう一度探してみてください。最近再発行を希望する人が多いのですが、しばらくするとカードが出てきたという人が多いので、このようにお願いしています」と説明された。そこで昨日は電話番号を告げて3冊本を借りた次第。

ところでどうして貸出カードが見つからない人が増えたのだろう。一つは暑さのせいではないだろうか?気温が高い上、節電ムードでエアコンを切っているとついつい集中力が欠如して、カード類を決まった場所に置くことを失念してしまう。

いやあるいは年齢のせいかもわからない。図書館の利用者は我々位の年代の人が多いから、カードの一時的な紛失が増えたのだろうか?

まあ時間をかけて探してみよう。

ところで身の回りでカード類が増えていることも、カード紛失の原因の一つだ。もし図書館が電話番号+免許証等のIDで恒久的に本を貸してくれるならこれ程便利なことはない。賛同してくれる人が多ければ市役所に申し入れをしたいのだが、いかがなものでしょうか?

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豊になればなるほどデモが増える中国のパラドックス

2011年08月20日 | ニュース

少し前中国の大連で高い毒性を持つパラキシレン工場の移転を求めるデモが起きたことが世界の耳目を集めていた。デモは平和的なもので、その要求は地域エゴ的なものだと言われている。地域エゴまたはNimbyismと呼ばれるものは、not in my back yardの頭文字を取ったもので、ごみ処理工場など必要なものでも、住環境上好ましくないものは自分の裏庭には置かないでくれ!というある意味では地域エゴ的な要求なのである。

中国政府は大連市民の要求を聞き入れてパラキシレン工場を大連市街以外のところに移転することに同意したと報じられている。

この出来事に関して、FTは「どうして中国政府はNimbyismに対応したのか?」という分析を紹介していた。

一般的には一人当たりGDPが5千ドルから6千ドルの水準に達すると、発展途上国は民主化すると言われている。今年のアラブ諸国の民主化運動が成功するかどうかはもう少し時の経過を見ないといけないけれど、所得の向上が民主化運動の前提となったことは間違いなさそうだ。

中国の一人当たりGDPは市場レートベースでは4,660ドルだが、購買力平価ベースでは既に民主化ラインを超えている。だが中国共産党は、中国は例外だとしてこの理論を拒否してきた。

だがFTによるとオックスフォード大学のCollier教授が1960年から世界各国の分析を行った結果、民主主義国家では一人あたりGDPがある閾値を越えると豊かになると社会的騒動が起きる可能性が低下する。しかし独裁国家では豊かになると社会的騒動が増える傾向にあると指摘している。教授によるとその閾値は2,700ドルということだ。

食べることに精一杯の状態では、危険物を製造する工場が近くにできてもそれ程気にならない。まず食料や雇用の確保が第一だからだ。だが少し豊かになると健康が気になってくる。そこで地域エゴ的な抗議行動が発生する。

もしCollier教授の仮説が正しいとすると、中国は豊かになればなるほど抗議行動や騒動が多発し、社会的不安が増すということになる。本当に世界中安心して見ていられる国は少なくなった。

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退職後は株式運用比率をどれ位にするべきか?

2011年08月19日 | 投資

1週間程比較的穏やかな相場が続いた思っていたら、昨日はアジア・欧州で広がった相場の急落が米国にも伝播し、ダウは419ドル(3.7%)下落した。相場が急落した原因は、欧州のある銀行が欧州中銀の緊急融資を受けたという噂が、金融危機の再来を想起させ、銀行株が急落したことに加え、フィラデルフィア連銀の製造業業況指数が09年3月以来の低水準に下落したことが主なものだ。

相場の下落は米国の個人投資家、特に退職者や退職間近な人に改めて「退職後はポートフォリオの株式比率をどの程度にするべきか?」という問題を突きつけているようだ。ロイター英語版にHow much stock should older investors hold?という記事がでていた。

退職者にとって「どれ位株を持てば良いのか?」という問いに、単一の正解がある訳ではない。それは手持ち資金、年金等の定期収入の額や長生き期待度あるいはリスク許容度により変わるからだ。また投信会社やファイナンシャルプランナーの見解も分かれる。

パットナム・インスティテュートのある専門家は、退職者は株式への資産配分比率を25%以上にするべきではないと言っている。一方T・ロウ・プライスは65歳の退職者は株式比率を55%にして、35%を債券、10%を現金にするべきだと述べている。

この記事を書いているMiller氏自身は「個人的見解では、退職後の目標をかなえる経済的自信があるなら、株式比率は低ければ低い程良い」と述べている。退職後の目標retirement goalsとは何か?というと、「退職後にライフスタイルを維持しながら、予想しうる色々な出来事に備えること」となるだろう。つまり退職後どれ位の資金が必要かというプランを立てて、手元資金をどれ位の利回りで運用するべきかを計算して、必要な利回りが低い場合は株式リスクは極小にしようというのがMiller氏の考え方だ。

もっともライフプランを立てても、予想が付かないことが沢山ある。まず第一にどれ位長生きするかが分からない。次にデフレに慣れきった日本にいると実感しないがインフレリスクがある。株式投資の一つの意味はインフレヘッジであるが、乱高下する市場にハラハラしながら、株式を持ち続けるべきかどうかはその人のリスク耐性に関わっている。

Miller氏の記事には、平均家計に較べてリスク資産に投資する割合が高い人の比率が年齢階層別にグラフで示されていた。それによると、65歳でリスク資産に投資する割合が平均より高い人は15%程度で、80歳以上になると5%前後だった。

高齢化が進むということは個人投資家のリスク許容度が下がるということで、株式の需給には長期的なマイナス要因だろう。

☆   ☆    ☆

話は変わるが週間ダイヤモンドに「家族同席なしに高齢者に投信を販売した中央三井の有力支店が開店休業」という記事がでていた。記事によると同信託には「高齢者ルール」という内規があり、80歳以上の高齢者には家族の同席なしには答申を販売しないことになっているが、その支店では虚偽の報告をしていたという話だ。また同信託では半年程度で投信の乗換を薦める回転販売が跋扈しているという関係者の話が紹介されている。記事は同信託に投信販売のドライブがかかった原因を合併に伴う主導権争いに求めているが、もし本当にそうだとすると顧客を無視した寒々として光景である。

もっとも私の家内のところには、国債を預けている某大手証券会社から盛んに国債からリスク商品への乗換の勧誘があるそうだから、リスク商品販売にドライブがかかっているのは某信託だけではないだろう。

だがリスク商品を販売する方も購入を検討する方も、一度「退職後にリスク商品を持つ意味」という原点に立ち返って考えるべきだろう。リタイアメント・ゴールを達成する目処なり自信があれば、リスク商品は極力抑えるべきだというMiller氏の言葉は、市場が荒れているだけに重く響く。

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議会の混乱、どこの国でも国民はうんざりですね

2011年08月17日 | ニュース

8月11-14日のギャラップ調査によると、米国議会への支持率は過去最低(2010年12月と同率)の13%に低下し、84%の人が不支持だった。元々アメリカ国民の議会の仕事に対する支持率はそれ程高くなく、1974年の調査開始からの平均支持率は34%である。瀬戸際まで駆け引きが続いた割には、中途半端に終わった債務上限引上法案に国民のフラストレーションが溜まった結果だろう。

別の世論調査機関のピューリサーチによると、72%の国民は議会の交渉をridiculous(馬鹿げた、非常識な)、disgusting(うんざりさせる)、stupid(馬鹿な)、terrible(ぶざまな)、childish(児戯に等しい)、joke(戯言)などの否定的な評価を下している。

それにしても英語というのは、類義語の多い言葉だ。議会の馬鹿げた交渉を評価するにこれだけの言葉があるというのは感情表現が豊かなのか?それとも馬鹿げた連中が多いということなのだろうか?

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成長鈍化、しかし嵐の上空を行くドイツ

2011年08月17日 | 社会・経済

昨日(8月16日)の米国株式市場は一時の大幅下落は取り戻したものの、ダウは77ドル下げて終わった。7月の米国の鉱工業生産指数が市場予想の倍近い0.9%上昇という好材料があったものの、ドイツのGDP成長率の低下とメルケル首相・サルコジ大統領の会談結果に対する失望から、好材料は無視されたようだ。

第2四半期のドイツのGDP成長率は0.1%(第1四半期成長率は修正されて1.3%)。エコノミスト誌によると、ドイツの統計局は輸出は強かったが、個人消費と建設が弱かった。数日前に発表されたフランスのGDP成長率(第2四半期はゼロ)に続いてユーロ圏の経済の弱さを改めて実感させる数字だ。全ユーロ圏の第2四半期の経済成長率は0.2%(第1四半期は0.8%)となった。

メルケル・サルコジ会談では、一度否定された金融取引税の復活とユーロ圏諸国でより厳格な均衡予算を憲法に盛り込むことが合意されたが、市場が期待していたユーロ共同債は否定された。

メルケル首相はまた「ユーロの信任を回復し、危機を沈静化させる」ことに対する危機意識が欠けていると批判されるだろう。

メルケル首相はどうしてそんなに落ち着いていられるのか?と疑問について、前日読んだニューヨーク・タイムズにGermany is flying above the economic stom in Europeという記事があった。「ドイツは欧州圏の経済の嵐の上空を飛んでいる」という意味で、ポイントを紹介すると次のようなことだ。

「ドイツではアテネで見られるような催涙ガスもなく、ロンドンで見られるようなタイヤを燃やす光景もない。多くの欧州諸国が厳しい緊縮財政法案の立法化に苦しむ中、ドイツでは142億ドルに達する減税案が議論されている」

「何故ドイツが平然としていられるか?ということの単純明快な答は雇用だ。ドイツでは今年の5月に前年に較べて706,000人雇用が増えた。これを米国の規模に引き直すと2.7百万人雇用が増えたことになる。ドイツの失業率は7%だが、人口が減少しているので、失業よりも熟練労働者の欠乏を懸念する経済学者や政治家がいるほどだ」

「ドイツの若年層の失業率の低さはオランダ、オーストリアについで欧州で3番目。欧州の若年層の平均失業率は20.5%で、ドイツのそれは半分以下の9.1%である。政府の専門家は、雇用ブームは向こう4年間は続くと予想している。」

ところで目下のところ、このように好調なドイツだが、これはシュローダー前首相の時に、アジェンダ2010と呼ばれる構造改革を推進したからだと言われている。これは労働市場の柔軟化と社会保障費用の削減により財政の健全化を図ったものだった。ただしこの構造改革はドイツ国民には不人気でシュローダー氏は2005年に退陣し、メルケル首相が大連立内閣を組成している。

厳しい構造改革を経て強い経済力をつけたドイツ国民について、メディアは「彼等はギリシア国民に同情していない」と報じられることが多いが、ニューヨーク・タイムズの記事によるとある世論調査では52%のドイツ人はギリシアの抗議行動に共感を示している(39%の人は示していない)という。そのことはドイツの構造改革が厳しかったことの証左ともいえるだろう。

☆   ☆   ☆

ところで日本に目を向けると、いよいよ菅首相が退陣して、民主党の代表選挙が行なわれる目処が立ってきたが、出馬が取りざたされている議員の中で復興増税を明確にしているのは野田財務相と仙石官房副長官位だ。

今のところ日本国債の95%以上は日本人が保有しているので、「国債危機」は起きていない。だがこれは患者が自覚しない間に病巣が拡大している状態に過ぎない。

不人気でも10年20年先を見据えた政策を推進できる政治家は出てこないものだろうか?

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