金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

新しいボラティリティの時代

2012年06月05日 | 金融

昨日ブログの中で「金融」から距離を置き始めている・・・・と書いた。その理由を幾つかあげたが、今ひとつすっきりしないものがあったが、今日ファイナンシャル・タイムズのGillian Tett女史のOur volatile age defies spreadsheet strategyという文章を読んですっきりしないものが何であるかが判然としてきた。

それは過去2,30年の間に発展してきた「金融工学」の根幹を揺るがす問題が起きているということだ。

広い意味の金融工学は、過去のトレンドを分析し、将来を予想し、リスクをプライシングに織り込むことである。そこでは人々は「経済合理性」に基づき、市場に参加し、お互いに約束を守ることが前提になっている。

Tett女史は「20世紀の中頃融資業務を実践したバンカーにとっては、カウンターパーティが約束を守るかどうかというリスク判定が重要で、トルコやインドネシアの与信リスクを判断する時、政治リスク、公民としての価値観、社会文化といったソフト要因に注意を払っていた」と述べる。

しかし欧米のような先進国については、政治リスク等のソフト要因は無視されインフレ率等計量化できるリスク要因のみがフォーカスされてきた。だが今南欧諸国で起きている問題は、まさに政治的・社会的なリスクの問題である。

☆   ☆   ☆

古代のギリシャやローマにおいて、無担保でお金を借りることができたのは貴族や上流階級の市民のみであった。奴隷もお金を借りることができたが、彼等は必ず担保を求められた。上流階級の市民は「必ず約束を守る」という社会的信頼の下で、無担保取引ができたのである。

リーマンショックや今のスペインなどの金融混乱の原因をたどると、無節操な住宅ローン融資の問題に行き当たる。住宅ローンは英語ではmortgageというが、その語源はフランス語のmort「死」とgage「ギャンブル」にあるという説がある。不動産を担保にお金を借りるということは命を懸けたギャンブルという意味だろうか?

本来の融資は「債務者の返済意思と返済を可能にする事業計画や収入」をベースに行なわれるべきものであり、担保物件の処分による弁済は最後の手段であるべきだった。だが担保付融資が拡大する中で、このような規律が弛緩していったのではないだろうか?

取引相手の債務履行意思を前提にした現在の金融取引の枠組みが揺らいでいる。信頼が回復しないと、疑心暗鬼が広がり、担保以外に信じるものがなくなる。それは奴隷の取引への逆戻りである。

Tett女史は「我々は新しいボラティリティの時代に入っている。それは金融と経済の面だけではなく、政治的な面と社会的な面において」と結んでいる。いわば市民社会の根幹をなす「約束を守る」という基本的な規律がリスクに晒されているのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーロの「最後の審判」は近い

2012年06月04日 | 金融

昨日ワイフに「近頃ブログに余り金融の話題を取り上げていないわね」と言われた。「金融そして時々山」という大袈裟な名前を付けている私のブログだが、一つの曲がり角に来ているのかなぁと昨今感じている。というのはこれまでの仕事人生では「金融」が中心テーマだったが、そろそろ第一線を引く・・・ということで仕事としての「金融」から離れつつあることだ。次に「個人投資家」の観点から見ると、現在はsidelineに立っている。「株は買えなくても、為替がある。ユーロをショートすれば良いのではないか?」というご意見もありそうだが、為替にノメリ込むには少し仕事が忙しい・・・という状態だし、基本的に私はショートポジションが苦手である。毎月小さな金額を貯める個人としては、資産を買い持ちできるような投資環境でないと動き難いのである。

さてその投資環境だが、スペインの経済危機、欧州圏の記録的な失業率、米国の雇用市場の停滞あるいは中国の工業生産のスローダウンといった逆風が明らかになるにつれ、混迷が深まっている。中でも今投資家がもっとも注目しているのは、ユーロが統合を保つことができるのか?あるいはギリシャ等南欧の国が離脱するのか?が市場関係者の最大の関心事だ。ニューヨーク・タイムズはこの問題をEuro Zone nears moment of truth on staying togetherというタイトルの記事で取り上げている。Moment of truthは最後の審判あるいは正念場という意味だ。

先週末ユーロ危機の最中にあるイタリアのモンティ首相はユーロ維持のために「欧州連合債」の創設を訴え、スペインのラホイ首相は欧州諸国の予算と債務管理の同期をとるため、共通の財務局を作るという提案を掲げた。

だがニューヨーク・タイムズは「世界経済の沈鬱さが深まる中で、そのような高尚な話は投資家にとって効果が少な過ぎまた遅過ぎるのではないか」と懐疑的だ。

同紙によるとスペインの不動産関連の不良債権額だけで2,200億ユーロに達する。アナリスト達はスペインの包括的な救済に要するコストは3,500億ユーロに達し、イタリアの救済コストはそれを上回るだろうと推計している。少なく見積もっても二国の救済に7千億ユーロという資金が必要で、これは欧州安定メカニズム(来年7月発足予定)が用意する5千億ユーロの融資枠を凌駕している。

スペインの中央銀行によると、3月に投資家はスペインの株と債券を売却して、660億ユーロの資金が海外逃避した。またECBによると4月にはスペインの銀行から310億ユーロの預金が引出され海外逃避した。目先投資家が注目しているのは、今週木曜日に予定されているスペイン国債20億ユーロのオークションだ。ニューヨーク・タイムズは10年債の入札利回りが7%に達しても買い手を魅了しないのではないか?と懐疑的だ。

ところでニューヨークタイムズは別の記事で「ユーロ問題に対するQ&A」を提供していた。その内の幾つかをご紹介しよう。

Q「迫り来る銀行取付危機に対して、スペインやギリシャの当局あるいはECBは何故対策を打たないのか?」

A「ユーロ圏の銀行はそれぞれの国の規制下にあり、それぞれの国が預金保険プログラムを持っている。しかし預金者は国の財政状況が悪化するにつれ、その保険能力に疑問を感じている。欧州諸国の政治家達は全欧州をカバーする預金保険機構について討議を行っているが、実際のアクションはほとんど取られていない。ECBのドラギ総裁は健全な銀行が資金不足に陥るようなことは認められないといっているが、ECBにできることは、銀行に融資をするだけで、枯渇した資本準備金を埋めることも、預金保険を提供することもできない」

Q「ECBは何故『国』に融資しないのか?」

A「ECBは各国の銀行に融資することはできるし、現に多額の融資を行っている。しかしECBが『国』に融資することは認められていない。もっともECBはこのルールを曲げて、オープンマーケットで国債の買い入れは行なっているが。ECBが米国連銀が行なっているような規模で国債を購入することは考え難い。アナリストや政治家の中には中央銀行が大量に国債を買う量的緩和を行なうべきだと考える人もいるが、ドイツや北方諸国の強い反発を招くだろう」

☆  ☆  ☆

手詰まり感の高まるユーロ危機問題。本日の日経平均は144円下げて、8,295円でクローズした。下げ足は急速だが、まだ底は見えないようだ。第二の世界的大不況の瀬戸際である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スマートフォンとPCの連携(1)

2012年06月03日 | デジタル・インターネット

この週末はスマートフォン(Arrows F-05D)と自宅PCの連携を行った。スマートフォンとPCを繋ぐのはUSBケーブル(スマートフォンに付いている)を使うのが簡単だ。PC内の音楽などを簡単にコピーすることができる。

だが富士通製のF-05Dには、パソコンと無線交信するという便利な機能が付いている。それはF-link http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120307-00000055-zdn_m-mobiという機能だ。

連携するパソコンは富士通製である必要はない。私の自宅PCはNEC製だが、F-linkソフトをダウンロードで取り込むと簡単にスマートフォンと連動することができた。

これで携帯電話とPCはつながった。さらに携帯電話を無線LANで繋がているプリンタに繋ぐこともできた。これで携帯電話内の写真やスキャンデータ(PDF)をダイレクトに印刷することができる。またプリンタのスキャナー機能を使ってスキャンする画像をスマートフォンに取り込むことができる。

とまあ便利づくしなのだが、私がこれらの機能を今後使うかどうか?というと少し疑問だ。携帯(スマートフォン)やデジタル一眼レフを経由して写真を撮る機会は増えている。だが紙にプリントする枚数が増えているかどうか?と言われると変わらない・微減が私の答だ。つまり「撮った写真」でも印刷に進む割合は減っているのだ。またカメラや携帯電話により撮影した画像は、PICASAやEvernoteといったクラウドコンピュータのネットワーク上に保管することで、いつでもどこでも閲覧し、必要があればプリントすることができる。つまり携帯電話と自宅PCを無線で接続し、静止画や動画データを交換するというニーズは減っているのだ。

スマートフォンを選ぶ時、落ち着いて考えるとPCとの接続性はそれ程重要な決定要因ではなさそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トマトに小さな実ができた

2012年06月03日 | うんちく・小ネタ

4月末にプランターに植えたトマトに小さな実ができた。

小指の先ほどの小さなトマトが幾つもできている。赤くなるのは花が咲いてから50日位経ってから、とインターネットに書いてあったから、食べられるようになるのはまだまだ先のことである。

庭に出たついでに庭木の剪定を行った。いや、剪定というと枝ぶりを整えるといったプロフェッショナルな感じがするが、渡しの場合は枝切り鋏で、茂った小枝をバサッバサッと切るだけの話だ。アジサイの花が咲き始めていた。梅雨は近い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワーゲンゴルフで北信濃往復、燃費は?

2012年06月02日 | うんちく・小ネタ

先週末(5月26日-27日)会社の山仲間4人と満タンにしたワーゲンゴルフで戸隠キャンプ場を往復した。今日近所のガソリンスタンドで再び満タンにすると、37.70L(5,617円)入った。走行距離は546kmだから燃費はリッターあたり14.5kmだった。

私が乗っているワーゲンゴルフTSI Comfortline Premium Editionの国交省審査の燃料消費率は16.4km/Lだから、今回の実績14.5km/Lはまずまずの数字だ。

世の中にはゴルフより燃費の良い車はある。しかし往々にして燃費を誇る車は走る楽しみに劣る。ゴルフより馬力があり、スポーティな走りをする車は多い。だがそれらの車はおしなべて燃費が悪い。

そんな中でゴルフは走る楽しみと燃費のバランスが非常に良い車だということができる。1.4Lのエンジンは小型で環境に優しい。一方低回転域から素早いレスポンスを発揮するターボチャージャーは走る楽しみを満たしてくれた。自転車に例えるならばゴルフは実用車=低燃費車とロードレーサー=スポーツタイプの高級車の間に位置するクロスバイクである。

ところで高速料金は、往路の所沢→信濃町が2,900円、復路の長野→所沢が2,600円だった。交通費は合計11,117円だから一人あたり2,780円である。4人で車ででかける北信濃は経済的だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする