WSJはOECDが追跡している45ケ国総てで経済成長が上向いていると報じていた。これはリーマンショック以降初めてのことであり、もう少し過去を振り返っても、1980年代後半と1973年のオイルショック以前の数年しかなかったということだ。
IMFは先月今年の世界の経済成長率を3.5%、来年の成長率を3.6%と予測している(2016年は3.2%)。
世界の経済成長が加速しつつあるのは先進国の低金利政策と原材料価格の持ち直しが主な要因だ。
まもなく米国のジャクソンホールで中央銀行総裁の集まりがあるが、イエレン連銀議長やドラギ欧州中銀総裁もかなり自信に満ちたスピーチができるのではないだろうか?
一方低金利の弊害は表面化しつつある。米国では商業銀行が利ザヤを稼ぐために、長めのローン(特に不動産ロール)を出す比率が高まっているし、日本では銀行のカードローンが過剰融資状態になっているという指摘が出始めている。
中国では当局の規制強化にも関わらず、投機的な不動産取引が収まる気配は薄い。
過去の世界的な景気拡大が資産バブルの崩壊により終焉したことを思うと今回の景気拡大がその轍を踏まないという保証はない。
中央銀行の総裁が自信を持ってスピーチができると書いたが、それはこれまで低金利・債券購入による流動性供給が経済成長を後押ししてきたという点で、バブルの萌芽を抑え込む点で自信に満ちているかどうかは分からない。
現在のドル円為替の水準(109円前半)を見ると、市場は今後2年間の間に2回の利上げよりは1回の利上げを予想する向きが多いことを示唆していると言われている。市場は米連銀の緩やかな債券購入プログラムの縮小はほぼ織り込んだと私は見ているが、政策金利の引き上げにはなお神経質なようだ。
ところで日銀総裁の影は薄い。連銀や欧州中銀が時期や規模は別として、超緩和政策からの転換が視野に入る中、日銀にはまったくその兆しがないからだろう。
金融政策は不況期には緩和策で景気を刺激し、過熱期には引き締めでインフレや資産バブルを抑える効果を持つ。有効な金融政策を打ち出すためには、締める時は締めて「操作する余地」を手元に作ることが必要だ。米連銀や欧州中銀は手綱を手繰り寄せて操作する余地を見出そうとしているが、日銀にはその兆しを見ることはできない。手綱が伸びっぱなしでは次の手は打てないと思うのだが・・・・