最初に断っておくが、私は以前から小泉首相を支持している。しかし今回の訪米の件、特にメンフィスまで行ってプレスリーの歌まで歌ったのは感心しない。これは日本国内より海外で甚だ日本の首相が軽く見られたのではないかと危惧する。
エコノミスト誌はこういう表現を使っている。With the only world leader to have serenaded him with the Elvis Presley song "I want you・・・" エルビス・プレスリーのI want you, I need you, I love youをブッシュ大統領に歌ったたった一人の世界の指導者・・・
現在の欧米の慣行はいざ知らず、古代中国から続く東洋の伝統では、一国の王が他国の王の前で歌を歌うといった芸人の真似などしないものだ。何故なら芸人の真似をするということは臣下の礼を取るということだ。もし対等の関係を保つのであれば相手にも歌を歌わせる等の芸をさせなければならない。こんなことをしているから、エコノミスト誌にワールドトレードセンターの爆破事件の後、小泉首相は日本をアメリカの後に投げた Mr Koizumi threw his country behind Americaと言われるのだ。もっとも小泉首相やブッシュ大統領はこのような意識をどれ程持っているのか分からないが。
小泉首相の訪米をブッシュ大統領が心から歓待したことは疑う余地はないが、一般のアメリカ人が心から歓迎したかどうかはよく考えておく必要がある。小泉首相は当初上下院の議員を前に演説する心積もりだったそうだが、米国の議員達の反対で計画はぽしゃった。その先鋒に立ったのが、戦争経験のあるヘンリー・ハイド上院議員(国際関係委員会委員長)だ。彼は「小泉首相が日本の敗戦日である8月15日に靖国神社に参拝するのであれば、日本の真珠湾攻撃を公然と批判したルーズベルト大統領と同じ演説台を使うことは好ましくないだろう」と言っている。
また中国や韓国ほどではないにしろ、戦時中日本軍が捕虜を残虐に扱ったので日本の戦犯行為に嫌悪感を持っている人がアメリカにいることは事実だ。こういうことはきちんと踏まえておくべきだろう。
今回の小泉首相の訪米は彼個人のためには良い思い出になったろうが、日本のためには尊敬を勝ち得る様なものではなかった様だ。有終の美を飾るということは難しいことなのだろう。