蒸し暑い夜の季節となった。この時期は暑さしのぎに抱き枕を抱いて寝ることにしている。先日ワイフはちゃっかり自分の抱き枕を用意しているので「僕のはどうした?」と聞くと「あなたのは昨年汚れたので捨てたわよ」という返事。しかたがないので夕食後近所のニトリまで散歩し、千円弱でそれらしいものを買った。それらしいというのははっきりと抱き枕とは書いていないが、長さが120cmあるので抱き枕以外には考えにくいからだ。
さてこの抱き枕、江戸時代は竹製だった様だ。蕪村に次の様な句がある。
抱籠(だきかご)や ひと夜ふしみのささめごと
抱籠は竹の抱き枕、竹夫人(ちくふじん)とも言う。ふしみは伏見の遊女である。抱籠を抱き寝しながらいつかの伏見の夜を思い出している・・・という蕪村の人間描写の一句だ。才能があればこの一句から短編小説を紡ぎだせるかもしれないと思う位味のある句だ。さて私はささめごともないので、山の疲れを安い枕に委ねて寝入ることにしよう。