金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

失敗したから怖い北朝鮮のミサイル

2006年07月06日 | 国際・政治

昨日(7月5日)北朝鮮が長距離ミサイル・テポドン2を含む7発のミサイル発射実験を行なった。この内テポドン2については発射後40秒で空中分解したので失敗と言われている。テポドン2については理論的にはアラスカやハワイ諸島を射程距離に入れるものだけに、失敗で米国防省は一息ついているところだ。というのは米国は20年の歳月と1千億ドル(11兆円位)の資金をかけてミサイル防衛システムを構築してきているが現時点で完全な迎撃能力があるとは言えない。

米軍は来月アラスカから実験用ミサイルをハワイに向けて発射し、追跡・迎撃テストを行なう。また年内にHIt to Killという迎撃方法のテストを行い、これで軍事上・政治上の自信を深めようとしているところだ。

本日午後額賀防衛庁長官が衆院の安全保障委員会で「米軍と協力して一刻も早くミサイル迎撃体制を整備したい」と言っている。多いに結構なことである。ただし政府は日本とアメリカの基本的な違いをきちんと国民に説明しておく必要がある。

それは3つの点である。

1)北朝鮮がテポドン2に核弾頭を実装して米国に発射する技術水準に到達するには数年を要する。従って米国そのものにとって現段階では北朝鮮のミサイルは軍事的にはなんら脅威ではない。しかし今回の北朝鮮のミサイル実験でも明らかなように、日本を射程距離に置くミサイルについては十分な脅威であることが一層はっきりした。つまり長距離ミサイルの実験に失敗したから、日本のリスクは高まったといえる。北朝鮮はテポドン2の失敗を覆い隠すためにも、ノドン級のミサイル実験を繰り返す可能性は高いと私は見ている。

2)次に米国と日本では北朝鮮のミサイルが到達する時間が違う。米国には30分位かかるが、日本には10分弱で到達する。それだけ迎撃する時間が短いということだ。

3)ミサイル防衛体制で十分迎撃することが出来ない場合、米国には北朝鮮がミサイル発射準備をした場合にミサイル発射基地を攻撃するべきだという意見がある。因みにウオール・ストリート・ジャーナルが行なっているインターネット上の世論調査でも4分の1の人が北朝鮮のミサイル実験に対して軍事的行動を取るべきだと言っている。米国の国防体制とは理念ではなく実効性が尊重されその結果常に先制攻撃を内包すると考えて良い。

なお「米国そのものにとって北朝鮮のミサイルは軍事的に脅威ではない」といったが、イラン問題を考えるとやはり一つの脅威にはなる。昨年後半北朝鮮は旧ソ連の潜水艦発射型のミサイルSS-N-6の改良型(ノドン?)をイランに相当数輸出している。米国の政財界に大きな力を持つユダヤ人の母国ともいうべきイスラエルはイランからのミサイル射程圏に入る。以上のような文脈から米国が北朝鮮のミサイル問題に極めて高い関心を持っていることは念のため補足しておこう。

さて日本のミサイル防衛体制であるが、そもそも防衛体制とは「敵国のミサイル発射準備をスパイ衛星で継続的に観測する」「ミサイルの発射時に大量に発生する赤外線を観測する」「発射直後の上昇段階を撃つ」「ミサイルを追跡する」「水平飛行段階を撃つ」「下降段階を撃つ」といった複数のプロセスの組み合わせである。その構築・運用には多額のコストがかかるし、敵国が防衛網の突破する方法(例えばおとりのミサイルを使う等)を工夫すると又手直しがいるという具合にメインテナンスは大変なものだ。それでも完璧な迎撃が可能なのであろうか?概ね米国の軍事専門家は悲観的な見方をする様だ。

私が主張しておきたいことは「北朝鮮の攻撃意思が明確になった段階で、ミサイル基地を攻撃することも防衛体制に組み込む」ことを考えるべきであるということだ。具体的にいうと不測の事態に備えて、イージス艦に地上基地攻撃用の艦対地ミサイルを実装するということになる。これが北朝鮮のような危険な国に対して私は最も実効性の高い防衛策であると考えている。ただしこれは高度な偵察衛星と迎撃ミサイルと併用して運用するべきものであり、最後の切り札であることは言うまでもない。これは現在の憲法の範囲で可能であると考えているが、もし憲法の枠に入らないというのであれば、憲法を変えれば良いのである。そもそも憲法や法律は人々が安全で人間的な生活をするために作られたルールである。基本的な安全性が脅かされているのに、60年前に他の国が決めてくれた憲法を後生大事に守っている必要はない。

わが国は毎年5兆円という国防予算を使っている。これだけのお金を使って国防の実効性があがらないのでは、金の無駄使いであろう。政府や国会は今こそきっちりした対応を取らないといけない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする