金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米国、住宅ローン救済に特効薬を出す

2009年03月05日 | 金融

昨日(3月4日)米国政府は、フォークロジャー(不動産抵当の強制処分)の嵐に苦しむ住宅ローン業界を救済するためにかってない大胆な対策を導入すると発表した。その内容についてはいずれ日本の新聞でも紹介されるから、詳しく書かないが、簡単にいうと3つの柱で校正されている。

まず民間住宅ローンで、金利の引下げや返済期間の延長で毎月の支払を月収の38%まで下げることが可能なものについては、政府が金融機関(政府が最大の株主になったシティや公的資金を投入した大手行など)に対して、インセンティブと補助金を出して、返済条件を緩和させる。これで最大4百万件のローンをフォークロジャーから防ぎとめる。

次に国有化されているファニーメイとフレディマックからローンを借りている人については、従来担保掛目が8割以下でないと借換を認めなかったがこの条件を緩和し、現在の低レートで借り替えることを認め、毎月の返済額を削減させる。こちらは5百万件の借換が予想されている。

最後にフォークロージャーは執行コストが高く手間がかかっていたが、これを簡略化するために、担保価値を割っている物件でも、担保物件の売却代金を貸し手に支払えば残債務を免除することにした。これは事実上住宅ローンを「ノンリコースローン」にしたことになる。フォークロージャーをされた住宅ローン債務者は信用履歴に傷がついたが、この方法(Short sale)や代物弁済(deed in lieu of foreclosure)によると信用履歴に傷が付かなくなるので、債務者側にもメリットがある。

このような施策をとると、銀行や住宅ローン会社が投資家から訴訟される可能性があるがそれを予防するために、破産裁判所に権限を与えるような措置も取られている。

これらの施策の効果について専門家達は高い期待を寄せている。

兼ねてから私は金融市場が安定するためには、住宅市場が底値を確認する必要があると述べていたが、今回の三本柱は泥沼に打ち込んだかなり強力な杭になるだろう。これで投売り的な競売が沈静化し、住宅価格の下落が止まると、消費者心理が改善してくる。

それにしてもこれは非常に大胆な政策である。というのは税金を使って住宅ローンの返済に苦しむ債務者の返済を緩和するということは、見方によっては「自己責任の原則」を超えた処置と考えられるからだ。ブッシュ大統領の時もボランタリーベースで住宅ローンの条件緩和策は推進されたが、ほとんど効果をあげなかった。

今回国が大胆な施策を取ることが可能になった背景は、公的資金投入により大手行に対する政府の発言力が飛躍的に高まったことがある。そういう意味では金融危機が行くところまで行ったから可能になった施策なのかもしれない。

コメント (3)
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