今日(3月17日)の日経新聞朝刊に「生保、再編の主戦場に」という記事があった。金融危機を引き金に生損保の垣根を超えた合従連衡が進む可能性があるという内容だ。その中に「欧米の保険会社も体力が落ち、(買収案件が)どんどん(日本の保険会社に)舞い込んでくる」と記事があった。
海外の保険会社が体力を落としているという記事は先週のエコノミスト誌に出ていた。その記事はIf banks go bang, life insuarance firms sputter.という書き出しで始まる。bangは「激しくぶつかってバンと音を立てる」という意味、sputterというのは「ブツブツ音を立てる」という意味だ。bankとbangの音をかけているので、きざっぽい表現になっているが、要は銀行も生保も同じような金融資産を持っているから、銀行がおかしくなっているなら、生保も資産は痛んでいるというのが理屈だということだ。
しかし生保と銀行では二つの大きな違いがある。一つは資金調達面で銀行は直ぐに解約できる預金や市場調達への依存度が高いが、生保の負債は生命保険という長期資金に依存しているので安定的だ。だから規制当局や格付機関も短期的な資産の劣化にそれ程敏感ではない。
もう一つの違いは金融システムにおける重要性の違いである。銀行の破綻はシステミックリスク(市場の一部における破綻が決済不能を引き起こし、金融システム全体が破綻するリスク)を引き起こすが、生保の破綻はシステミックリスクを引き起こす可能性が低い。
以上のようなことを踏まえてエコノミスト誌は個別銘柄の名前は挙げていないものの、米国の生保はかなり危険な状態にあると警告を発している。クレジットサイトという調査機関によると、米国の6大生保の2008年のレギュラトリー・キャピタル(規制上の資本)は、430億ドルだったがこれは保有する資産8主に社債)の含み損800億ドルを含んでいないということだ。つまり評価損が資本勘定をヒットすると明らかに資本不足という状態だ。
生保は外部借入は少ないが、それでも向こう4年間に米国の6大生保は130億ドルの借入が期限到来するので借換をしなければならない。また欧州の13の保険会社は290億ドルの借入をリファイナンスする必要がある。これについてエコノミスト誌は「生保は増資をして資本強化を行わないとリファイナンスは難しいが、生保会計に信頼が置けないので民間投資家は増資に応じないのではないか?」と厳しい見方を示す。
生保にとってラストリゾートは政府資金だが、生保は金融システムにおける重要性が低いので生保をリストラする場合は、株主のみならず生保の社債投資家も被害を被る可能性が高いと同紙は予想している。
今日の日経新聞には日本の生保の財務内容については言及していなかった。しかし金融機関やノンバンクが企業倒産で相当な痛手を被り、株式の含み損を抱える中、日本の生保の財務状況に変化がないとする根拠はない。
Banks go bang, life insuarance firms sputter.は日本にも当てはまる普遍的な法則だ。
なおまったく個人的な話で恐縮だが、私は数年前に生命保険をかなり解約した。理由は子供達が独立したので死亡保険金をそれ程残す必要がなくなったからだ。エクスポージャーが少ないと生保の健全性に余り懸念することがなくなった。ものがないということは悩みの少ない生活を送る第一歩ということなのだろうか?もっとも子供達に残す程のものもない・・・というのは少し寂しいことだが。