連休に山篭りしている間(といっても高々数日なのだが)に、変わったことの一つは日本のマスコミが「豚インフルエンザ」を「新型インフルエンザ」と言い換えたことだ。これは豚肉業界を「風評リスク」から守るため、豚フルという名称を新型フルに変えたということ。ところがメキシコについて感染者が多い米国のマスコミは相変わらず豚フルswine fluという言葉を使っている。まことに日本のマスコミはお上のご意向に忠実である。しかし豚インフルエンザの方がイメージが鮮明なので私は「豚」を使うことにする。
ところでニューヨーク・タイムズは米国疾病管理予防センターのベッサー医師のコメントを紹介していた。彼によると今回豚インフルエンザと確定されて入院した患者は35名に過ぎないが、患者の年齢の中央値は15歳という点に懸念を感じているということだ。通常のインフルエンザで死亡するのは高齢者や乳幼児あるいは健康上の問題を抱えている人だからだ。
若い米国人が豚インフルエンザに感染した理由は学生達が春休みにメキシコに旅行したことに起因するらしい。しかし幾人かの科学者は1957年以前に生まれた人は豚インフルエンザに対して免疫があるのだろうと推測している。何故なら今回の豚インフルエンザはH1N1型だが、このタイプは1957年にH2N2型「アジア・インフルエンザ」に取って代わられたからだ。もっともH1N1型は1977年に「ロシア・インフルエンザ」として再登場したが、免疫性を与えるには至っていないということだ。
さて通常のインフルエンザによる世界中の死者は年間25万人から50万人に及ぶということだ。「豚インフルエンザ」問題を軽視する訳ではないが、通常のインフルエンザで多くの人が亡くなっている問題を見落としてはならないだろう。余り適切なたとえではないが、これは日本における交通事故による死亡者と自殺者の関係に似ている点がある。因みに交通事故で約年間1万人が死亡しているのに対し、自殺者は年間3万人を超える。
1957年以前に生まれた人は豚インフルエンザに免疫があるという一部の学者の推測を信じて良いかどうか分からないが、死亡者数という点では我々にはもっと考えるべき問題が他にありそうだ。