金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国の輸出急減

2009年05月12日 | 社会・経済

最近のFTを見ていると少し明るい話と暗い話が交錯する。まあ、少し前までは暗い話のオンパレードだったので、景気の底に近づきつつある兆しなのだろうが。朝FTを見た時はECBのトリシェ総裁が世界経済の下降局面はボトム・アウトしたのではないか?という合図を送ったという記事が一番に出ていたが、午後見ると「中国の4月の輸出が急減した」という記事が一番新しく出ていた。本文をちらっと見ると「中国の6ヶ月連続の輸出減少は最近数週間ボトムアウトした兆しを見せていた世界経済について最悪の事態はまだ終わっていないという懸念を高める」という解説があった。

4月の中国の輸出は前年比22.6%減少して919億ドル。これは3月の輸出が前年比17.1%下落したのに比べてかなり大きい。3月の数字を見てアナリストや政策当局は中国の輸出商品に対する先進国の需要が回復してきた兆候と判断したが、4月の数字は逆行を示すものだ。

だがポジティブなニュースもあった。中国政府は今日、ここ4ヶ月間の都市部における固定資本投資は予想より伸びが高く、前年比30.5%だったと発表している。また中国都市部の不動産価格は前年比1.1%下落しているが前月比較では4月の不動産価格は0.4%上昇(3月は0.2%上昇)した。

悪いニュースと少し明るいニュースが交錯する状況を見ていると、地図に現れない程の起伏が連続する山を縦走する苦労を思い出す。山での登りは一般につらいものだが、登り一辺倒ならいずれ頂上に着くという思いでがんばりが効く。しかし少し登ってはまた下るというアップダウンが続く(しかも未踏の地でゴールが分からないとすれば)と、これははるかに負担感は大きい。

まさに今の世界経済は地図のない夜の山を登りか降りかはっきりしない中、アップダウンを繰り返している状態だ。

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GMの破産は避けられず

2009年05月12日 | 社会・経済

今日のファイナンシャル・タイムズを見てGMの会社更生法申請は不可避だと思った。FTによるとGMの270億ドルの社債権者は6月1日までに「社債とGMの株式10%を交換するかどうか?」を決めなくてはならない。因みにリストラ計画では政府がGMの50%の株式を受け取り、自動車労組が39%の株式を受け取り、既存株主が1%の株式を受け取る。

しかしアナリストによると、社債等の投資家は340億ドルのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を持っている。つまり保険を買っている訳だ。この保険はGMがデフォルト(債務不履行)に陥った場合は支払われるが、債権者がリストラに応じた場合(つまり債務不履行にならなかった場合)は支払われない。

デポジタリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーションによると、CDSの保有者はGMの会社更生法申請により24億ドルの純利益を得ることができる。従ってGMの社債とCDS両方を持っている投資家はリストラ計画に反対する強いインセンティブを持っている訳だ。

ところで気になることはマーケットは既にGMの更生法申請を織り込んでいるかどうかという点だ。GMの社債は額面の6%から12%の価格で取引され、100の債務を5年間プロテクトするCDSに対して投資家は当初の89に加えて、毎年5を支払う(これでは持ち出しの方が大きいが・・・)必要がある。これを見ると債券市場とCDS市場はGMの破産を織り込み済みといえる。

FTによるとクライスラーは社債よりも銀行借入に依存していたので、CDSが少なくGMよりも利害関係が複雑ではなかったということだ。

株式市場もGMの破産をある程度織り込んでいると思うが、納入業者等への影響もあるから思わぬサプライズがある・・・という位に考えておいた方が良いと私は思っている。

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Come up with (イディオム・シリーズ)

2009年05月12日 | 英語

Come up withには「提案する」「作り出す」「~に追いつく」など複数の意味があるので、文脈の中で判断する必要がある。民主党の小沢代表の辞任に関するニューヨーク・タイムズの記事の中に次の文章があった。

This wide spectrum of views has made it hard for the party to come up with a clear platform with to challenge the Liberal Democrats.

(民主党員の)政治的見解は(保守派から旧社会主義者まで)広範に分布するので、自民党に挑戦する明確なプラットフォームを作り出すことを困難にしている。

この困難さを何とかまとめていたのが、小沢の政治力と資金調達力だった。その小沢が代表の座を降りると自民党に対抗する明確な政策キャンペーンを張り、選挙民にアピールすることは難しい。

それにしても昨日の夕刻、小沢の辞任記者会見をテレビで見たが、小沢という男は本当に話の下手な男である。あの程度の話は原稿を見ずに真っ直ぐ前を向いて話できないものかと思った。ニューヨーク・タイムズはMr.Ozawa was never seen as a populist or a gifted public speaker.と述べている。「小沢氏はポピュリスト(大衆主義者)と見られたことはなく、また才能ある演説者とも見られなかった。」

そして同紙は「小沢氏は田中角栄のような過去の首相から政治の裏舞台で合意形成を図る技術を学んだ最後の影の将軍」と形容していた。

これは私見であるが、裏舞台根回し型の政治スタイルを改めない限り、民主党は無党派層の持続的な支持を得ることは難しいだろう。小沢氏はこの際国会議員を辞めるか次回総選挙には出馬しないと表明するべきだったと思っている。

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