金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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多くの英国人、定年延長を望む

2009年05月28日 | 社会・経済

ファイナンシャル・タイムズとハリス社が今年5月の初めに1126名の英国の成人に調査を行ったところ、6割の人がより多くの年金を受け取るために、現在の定年年齢(=公的年金支給開始年齢)65歳を超えて働きたいと考えていることが分かった。

この記事についていたグラフを見ると同じ質問に対して米国でも6割強の人が長く働くことを希望している。因みにイタリア人は6割が長く働くことを希望、フランス・スペインは4割強が長く働くことを希望。ドイツでは3割程度の人が定年延長に賛成だ。

定年延長に対する賛成比率の違いは、公的年金の厚みでは説明できないようだ。「退職後の所得の源泉」について上記各国の調査が出ているが、公的年金への依存度は英国・米国が32%と一番低く、スペインが74%と一番高い。イタリア(52%)、フランス(56%)、ドイツ(59%)はその中間だ。なお私的年金を加えた年金に対する依存度ではスペインが86%と一番高く、ドイツ80%、フランス76%、イタリア75%、英国71%、米国64%となっている。私的年金制度まで含めると、年金依存度の低い国ほど定年延長を支持する人が多い傾向があるといえそうだ。

定年延長に対する賛否は無論金銭的なインセンティブだけの問題ではない。老後をいかに過ごすか?という生き方の問題にかかわっているからだ。

だが経済的な側面から見ると、ファイナンシャル・タイムズは「国民が定年延長を希望して~つまり年金支給開始時期を遅らせる~いることは、国家財政上好ましいことだと述べる。なぜなら英国は財政悪化から格付低下の懸念が高まっているが、年金支給開始時期を遅らせることで、財政の健全性を回復できるからだ。

更にファイナンシャル・タイムズは年金経済の専門家アルトマン女史の「年金だけで年金危機を解決することはできない。我々は退職を再考するべきだ」という言葉を紹介する。英国では若年層が減少していて、高齢者の雇用を考えないと国としての生産性を維持できないからだ。

アルトマン女史は高齢者雇用についてパートタイムで仕事をすることがより容易になるように改善することが急務だと述べ、最良のモデルは「育児のために一時的に離職した女性が職場に復帰できる制度」だと述べている。

ところで昨日麻生首相と民主党の鳩山代表による初めての党首討論が行われた。新聞によると政治献金問題に多くの時間が費やされ社会保障問題は素通りだったということだ。

私は今日本で必要なことは、年金や医療など社会社会保障と経済活性化の問題を統合的に考えて「雇用のあり方」を抜本的に見直していくことだと考えている。英国より早いピッチで高齢化が進む日本で生産性を維持していくには、雇用の入り口つまり「新卒者の採用」と雇用の出口つまり「定年延長」と女性労働力の活用について大きな見直しが必要だと私は考えている。

この問題について正面から取り組むような政治家が出てくるならば、私は政党にかかわらず意見を傾聴したいと考えているがいかがなものだろうか?

コメント
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