週末のファイナンシャル・タイムズは銀行協会会長である三菱UFJ銀行の永易(ながやす)克典頭取のインタービュー記事を載せていた。ポイントは次のとおりだ。
- ユニバーサル・バンキング・モデルが批判されているにもかかわらず、日本の最大手銀行は国際的に競争力のあるユニバーサル・バンクを目指して再出発する。
- 世界の金融市場で重要な役割を担うには、高いレベルのユニバーサル・バンキング機能が必要である。商業銀行と投資銀行双方のオペレーションを持っていないと、ビッグ・ディールで競合することはできない。
永易頭取は又三菱UFJフィナンシャルグループは、モルガン・スタンレーに20%以上の出資を行っているが、更に海外の金融機関との提携や投資に熱心だろうと述べた。何故なら日本の銀行は先進的な金融技術面で極めて弱くまた顧客ベースも弱いので、海外金融機関との提携が必要と考えているからだ。
また永易頭取は90年代と2000年代の銀行危機をベースに、景気回復に重要な3つのステップがあると述べた。それは「厳密な不良資産の査定」「優良資産と不良資産の分別」「優良資産を持つグッドバンクにおける資本再構築」だ。彼は不良資産の価格決定が困難なので、金融危機を短期に解決することは困難だという見解を示した。
ところでこのインタービューの内容は三菱UFJを初め大手行の役職員の方も見られているだろうが、日本の銀行が先進的な金融部門で顧客ベースが弱いということには納得できても、金融技術面で極めて弱いから外資との提携が不可避という発言には抵抗を覚えるのではないか?と私は感じている。
恐らく日本の金融技術が抱える問題は、その他の技術全般と同じく、互換性やスケールメリットの欠如などという点にあると私は考えている。このことは戦前の日本軍が部分的には優秀な武器を作りながらも、消耗品や部品の互換性(例えば弾丸や小銃のねじなど)を欠いたため、実戦では性能を発揮できなかったこととある共通点を持っていると私は感じている。これは個々人やセクションの技術の問題というよりは、会社としてあるいは業界としての経営戦略の問題であろう。もしその戦略に革新がないと提携も外資への投資も期待した成果を生むことはないだろう。