今日のニューヨーク・タイムズで一番人気があった記事がJapan goes from dynamic to disheartened「日本は活力から意気消沈へ」という記事。著者のMartin Fackler氏は「日本のデフレの最も注目するべきインパクトは自信の危機だろう」と論じている。この記事は今朝のモーニングサテライトでも取り上げていた。
日本のように「デフレの罠」にはまることをJapnification(日本化する)という単語が生まれ、欧米の経済学者の中には「日本化」するリスクに警鐘を鳴らしている。
記事は多くのエコノミスト達は米国については、日本のような停滞は主に「政治システムの反応性がより大きいこと」と「資本主義の創造的破壊に対する寛容度がより大きいこと」から避けうると自信を持っていると述べる。
スタンフォード大学のHall教授は「我々は日本ではない。米国では人々に再び消費と投資を行わせる方法を見いだすことは有望だ」と述べる。
Fackler氏の記事は、大阪の匿名の小企業オーナーの話から始まり、東京のザウスhttp://www.zaus-co.com/kantou.phpという狭小土地に住宅を建てる建築会社の話へと広がっていく。これらのエピソードは面白いのだが、冗漫になるので、話の本筋を追うと、Fackler氏は「デフレのリスクは自信の危機を招き、若者達が進取の気性を失うことだ」と喝破している。
「自信の危機」Crisis of confidence。Confidenceには信頼、自信という意味がある。ここでは文脈から見て「自信」としたが「(たとえば将来に対する)信頼」という意味もあるだろうから、「信頼と自信の危機」がデフレの最大の問題と言う方が良さそうだ。
記事は進取の気性を失った若い男性は「草食動物」と呼ばれていることを紹介し、「かって日本人はエコノミック・アニマルと呼ばれていたが、どこかで日本人はアニマルスピリッツを失った」という昭和電工の大橋元社長の言葉を引用する。
さらに記事は松田久一氏の「嫌消費」について紹介する。松田氏は日本の20代を嫌消費者と呼ぶ。松田氏は、嫌消費世代が60代になるまでの間に彼等の倹約指向から日本経済は4千2百億ドル(約34兆円)の消費を失うと推定している。
記事は最後に「デフレは資本主義経済が成長するために必要とするリスクテイクを破壊する。創造的破壊は破壊的破壊に取って替わられた」という慶応大学の竹森俊平教授の言葉を紹介して締めくくっている。
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デフレが人々の自信や将来に対する信頼を奪い、倹約が消費と投資を抑制し、創造的破壊による経済成長が損なわれる・・・・だからデフレは避けなければならないというのがFackler氏の主張だ。
ではどうすればデフレリスクは回避しうるのか?具体的な処方箋はこの記事の中にはない。ただし「日本は公共投資で雇用を生み出したが、それは痛みを伴うが必要な構造的変革を先延ばししたに過ぎなかった」という言葉や「米国は政治システムの反応性が大きい」などという言葉の中にヒントはあるだろう。
それにしても「日本化」とは随分抽象的な言葉だ。今回は悪い意味で使われているが、将来「日本化」が良い意味で使われることはあるのだろうか・・・・・・