インド株が好調だ。昨日(13日)20,687.88ポイントをつけたSensex指数は今日も好調で08年1月に付けた高値の更新まで200ポイント程を残すところに迫った。個別株では私がADRに投資してるIT大手インフォシスが最高値を更新した。インド株、まさに絶好調である。
ニューヨーク・タイムズはIndia a hit for foreign investors「インド、外国人投資家にとって大当たり」という記事でインド株が好調な背景と内在するリスクを分析していた。
NTの記事によると、2年前の欧米の金融危機の時、外国人投資家は50億ドル近い資金をインドの株式市場から引き上げたため、インド株は大きく下落した。しかし今日の状況はまったく異なっている。今年9月に外国人投資家がインドの株式市場に投入した資金は71億ドル(これは1ヶ月に投入された史上最高額)。
先進国から発展途上国に急激に資金が流れている理由は、欧米日の金融超緩和策にある。欧米日は自国経済を刺激するために金利を最低水準に引き下げているが、資金は自国に留まらず発展途上国に流れ込んでいる。その行き先の一つがインドだ。今年の初めから9月までの間に285億ドルの資金がインドの株式・債券市場に流れ込んでいる(これは前年同期間の倍以上の金額)。
流れ込んだ資金はルピーの価値を押し上げ、今年ルピーはドルに対し4%近く上昇している。
強気な外国人投資家に対してインドの個人投資家は総じて弱気だ。NTによるとコーネル大学のPrasad教授は「恐らく我々は好不況サイクルの好況サイクルの中にいて引き続きリスクがやってくるだろう」と警告する。例えば08年に外国人投資家が資金を引き上げた時、インドの経済成長率は9.2%から6.2%に下落した。
また今日の懸念の一つは外国からの投資が、直接投資ではなく、逃げ足の速い株式投資に向かっていることだ。株式市場への流入資金は倍以上になっているが、対内直投は年初からの7ヶ月で前年同期間比24%減となっている。
ニューデリーベースのエコノミスト兼ファンドマネージャーのBhalla氏は世界経済に対する強気の見方を引き下げ、インド経済については欧米日より明るいがそれでもインド株は10%から15%下落する可能性があると信じていると述べている。
一方楽観派の一つの根拠は世界中でインド以上の投資チャンスを見つけることはできないだろうというものだ。
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インドのファンダメンタルズについて詳しく述べるスペースはないが、確実に言えることはインドは購買力平価ベースでは世界第4位のGDP大国であり、そのGDPは3兆5千億ドル(一つ上の日本は4兆1千億ドル)にのぼる。また経済成長率は7.4%(09年推定値)で大国の中では中国に次ぐ。更に近未来成長率で中国を凌駕すると予想するエコノミストもいる。
以上のように見ると長期的には成長機会に恵まれたインドだが、短期的にはペシミストが指摘する株価の下落リスクは高いと私は考えている。何が引き金になるか断定的に予想することは難しいが、現在インド株式市場に流れ込んでいる資金がヘッジファンドを中心として逃げ足の早い資金であることが懸念材料だ。ヘッジファンドは11月に決算のため手仕舞いをするところが多いが、場合によるとこれが悪影響を及ぼすかもしれない。
またヘッジファンドが欧米日の金融緩和を先取りし過ぎているのも懸念材料だ。いずれにしてもどこかでスピード調整はあるだろう。
そんな懸念から私は保有しているインド株投信の内一部をキャッシュ化しようと考えている。これはスペキュレーションというより一種のリバランスで、損をした日本株の穴埋めなのだが。
無論長期的にはインドやブラジルについては強気で15-20%の下落があれば絶好の投資機会と考えている。