金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

絶好調のインド株、だが懸念する声もあり

2010年10月14日 | 投資

インド株が好調だ。昨日(13日)20,687.88ポイントをつけたSensex指数は今日も好調で08年1月に付けた高値の更新まで200ポイント程を残すところに迫った。個別株では私がADRに投資してるIT大手インフォシスが最高値を更新した。インド株、まさに絶好調である。

ニューヨーク・タイムズはIndia a hit for foreign investors「インド、外国人投資家にとって大当たり」という記事でインド株が好調な背景と内在するリスクを分析していた。

NTの記事によると、2年前の欧米の金融危機の時、外国人投資家は50億ドル近い資金をインドの株式市場から引き上げたため、インド株は大きく下落した。しかし今日の状況はまったく異なっている。今年9月に外国人投資家がインドの株式市場に投入した資金は71億ドル(これは1ヶ月に投入された史上最高額)。

先進国から発展途上国に急激に資金が流れている理由は、欧米日の金融超緩和策にある。欧米日は自国経済を刺激するために金利を最低水準に引き下げているが、資金は自国に留まらず発展途上国に流れ込んでいる。その行き先の一つがインドだ。今年の初めから9月までの間に285億ドルの資金がインドの株式・債券市場に流れ込んでいる(これは前年同期間の倍以上の金額)。

流れ込んだ資金はルピーの価値を押し上げ、今年ルピーはドルに対し4%近く上昇している。

強気な外国人投資家に対してインドの個人投資家は総じて弱気だ。NTによるとコーネル大学のPrasad教授は「恐らく我々は好不況サイクルの好況サイクルの中にいて引き続きリスクがやってくるだろう」と警告する。例えば08年に外国人投資家が資金を引き上げた時、インドの経済成長率は9.2%から6.2%に下落した。

また今日の懸念の一つは外国からの投資が、直接投資ではなく、逃げ足の速い株式投資に向かっていることだ。株式市場への流入資金は倍以上になっているが、対内直投は年初からの7ヶ月で前年同期間比24%減となっている。

ニューデリーベースのエコノミスト兼ファンドマネージャーのBhalla氏は世界経済に対する強気の見方を引き下げ、インド経済については欧米日より明るいがそれでもインド株は10%から15%下落する可能性があると信じていると述べている。

一方楽観派の一つの根拠は世界中でインド以上の投資チャンスを見つけることはできないだろうというものだ。

☆   ☆   ☆

インドのファンダメンタルズについて詳しく述べるスペースはないが、確実に言えることはインドは購買力平価ベースでは世界第4位のGDP大国であり、そのGDPは3兆5千億ドル(一つ上の日本は4兆1千億ドル)にのぼる。また経済成長率は7.4%(09年推定値)で大国の中では中国に次ぐ。更に近未来成長率で中国を凌駕すると予想するエコノミストもいる。

以上のように見ると長期的には成長機会に恵まれたインドだが、短期的にはペシミストが指摘する株価の下落リスクは高いと私は考えている。何が引き金になるか断定的に予想することは難しいが、現在インド株式市場に流れ込んでいる資金がヘッジファンドを中心として逃げ足の早い資金であることが懸念材料だ。ヘッジファンドは11月に決算のため手仕舞いをするところが多いが、場合によるとこれが悪影響を及ぼすかもしれない。

またヘッジファンドが欧米日の金融緩和を先取りし過ぎているのも懸念材料だ。いずれにしてもどこかでスピード調整はあるだろう。

そんな懸念から私は保有しているインド株投信の内一部をキャッシュ化しようと考えている。これはスペキュレーションというより一種のリバランスで、損をした日本株の穴埋めなのだが。

無論長期的にはインドやブラジルについては強気で15-20%の下落があれば絶好の投資機会と考えている。

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日本の新聞も読み方で明日が見える

2010年10月14日 | 社会・経済

今日(10月14日)の日経新聞トップは「若年層収入 女性が上回る」だった。男性比率の高い製造業で雇用や賃金が伸びない中、女性が多く働く医療・介護などの分野は就職機会も給与水準も上向きという産業構造の変化から、30歳未満の単身勤労世帯では女性の可処分所得が男性を上回った。

モノとサービスが一通り行き渡り、その上普及品については製造コストの安い新興国から供給が続く時代。コスト競争では人件費や土地の値段が安い新興国に勝つことはできない。

日経一面の左側「ものづくり 逆風下の挑戦」では「同じものを安く作る競争だけでは、いずれ新興国に飲み込まれる」と主張し、シャープ町田会長の「日本固有の技術をもっと打ち出していくべきだ」という言葉を紹介している。

二つの記事の間には「セコム、医療ツアー参入」~新興国富裕層に検診・治療~という記事が出ている。記事によると世界の医療旅行者は6百万人。タイなどでは年間100万人以上受け入れるが日本は1万人以下にとどまるということだ。

日経の編集者が意図的にこれらの記事を並べたかどうかは知らないが、これらの記事を見ると日本が今後進むべき道が見えてくる。

一つは「普及品の価格競争」から脱却することだ。モノ作りで目指すべき一つのビジネスモデルはスイスの時計産業やフランス、イタリアのファッション業界だ。無論人口規模の違うスイスと同じ土俵で論じることはできないが、目指すべき一つのモデルではあるだろう。新興国に富裕層が増えてくると彼等彼女等は、高級品に憧れを持つ。良いものはステータスシンボルになるだけでなく、それを愛して持つ人に心の安らぎや豊かさを与えてくれる。そのようなモノ作りは日本の伝統産業の中にある。

サービス産業では医療・介護・観光といった分野の拡充だ。ここではハード面よりも顧客との対話やきめ細かい心遣いが重要だ。これらのヒューマンスキルにおいて女性は男性よりも優れたものを持っている。若年層で女性の所得が男性を上回ったという事実は、この分野で女性が優位であることの証(あかし)なのだ。

政治は主体的に経済活動を生み出すことはできない。しかし経済活動を後押しすることはできる。菅内閣が法人税の引き下げを打ち出しているのは良い兆候だ。女性が働き安くなる環境作りについても政策で後押しをして欲しいものだ。

しかし政治の動きの中には悪い兆候もある。それは自見金融担当相が「金融円滑化法の来年3月の期限延長も視野にいれる」という発言が社説に出ていたことだ。私は元々法律による返済猶予には反対なのだが、百歩譲って法律による返済猶予に意味があるとすれば、それは外的な大きなショックに対する緊急避難措置が必要な場合だけだ。

慢性病に陥っている企業に延命措置を施しても、再生の可能性はない。自見氏は医師出身だから終末医療が医療費膨張の大きな原因であることはご存知だと思うが、経済においても蘇生の見込みがない延命治療は大きなマイナスなのである。

日本が取るべき道が幾つか示唆される記事が並んだ後だけに円滑化法の延長談義は後味の悪いものであった。

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