今日(10月5日)の朝刊は検察審査会の議決により、小沢氏が強制起訴されることになったニュースや論評で埋め尽くされている。今後の政局のゆくえなどに関心はあるが、僕の中では政治家・小沢一郎ははるか昔に終わっているので小沢氏の去就についてさほど関心はない。
90年代前半「日本改造計画」で規制改革や市場開放など構造改革路線を唱えた小沢氏は評価できるが、小泉元首相にお株を奪われたとみるや一転して「弱肉強食の市場原理主義」と批判して立場を一変させた。この変節と定見のなさに僕の中で小沢氏は終わったのである。
今民主党は三つの壁に突き当たっていると僕は見ている。三つの壁とは「外交と国防」の壁、「自由競争経済を批判した壁」、「政治とカネに関する壁」だ。
この三つは昨年総選挙で民主党が自公政権に対するアンチテーゼとして掲げたものだが、今見事なまでにバックファイヤ(逆噴射)している。
第一の壁は尖閣問題に対する中国の強硬姿勢でその問題点があらわになった。
第二の壁は「自由競争」を格差の犯人扱いしたことによる自縄自縛である。今日の日経新聞「一目均衡」欄はインド経済界の論客ナラヤム。ムルティー氏の言葉を紹介している。「政府の役割は雇用の創出ではなく、雇用を生む企業家にインセンティブを与えることである」。インドを代表するIT大手・インフォシスを起こしたムルティー氏の言葉だけに重みがある。
菅首相は「雇用拡大」を連呼し、有言実行内閣を掲げるが雇用を拡大するには市場を拡大するしかない。この原点に帰るべきなのだ。インドで思い出したが今インド政府では中国語を履修外国語に加えようとする動きがある(反対意見も多いので実現するかどうか不明)。これは中国語を話すことができるインド人を増やして、中国企業からアウトソーシングを受託しようという遠大な構想なのだ。
第一と第二の壁を乗り越えようと思うと、民主党の主張は自民党のそれに近づいてアイデンティティがぼやけるだろう。だがもともと政権獲得のために掲げた無理筋の主張や願望が積み重なった主張だったということは、民主党の中の賢明な人は気がついているはずだ。
そして第三の壁、政治とカネの問題。これにけじめをつけることができないと民主党は本当に国民の失望を招くだろう。