金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

リース会社、ゼロ金利長期化を先取りか?

2010年10月26日 | 社会・経済

最近のリース会社が提示する料率を見ていると異常に低いレートで叩き合いをしているので驚きを禁じえない。

推測するに今月5日の日銀の金融政策決定会合で事実上ゼロ金利復活が決まったことで相当期間ゼロ金利が続くとスペキュレートして運用調達のミスマッチを拡大させているのではないだろうか?あるいは国内設備投資案件の尻すぼみを見通して、desperateな勝負に出ているのかもしれないと不安を感じる。

日銀はデフレが続く限りゼロ金利を続けると言っている訳だが、そこには無理がある。というのは今日のデフレの原因は金融政策に起因する要素は少ないと思われるからだ。

デフレの原因は沢山あるが、二つばかり非金融的な原因を上げると「消費態度の変化や価値観の変化」と「所得格差の拡大」が考えられる。前者についていうと例えば「若者を中心に車に乗らなくなった」あるいは「普通車から軽自動車に乗り換える人が増えた」ことが上げられる。恐らくこれは景気の波による一時的なものではない。仮に何年か後景気が良くなり所得が増えても恐らく車に対する需要が元に戻ることはないだろう。

「所得格差の拡大」についてはcontroversialな話で簡単に説明できないのでここでは省略する。

私が言いたいことは「デフレという病気に対する金融緩和という治療法が的を得ていないばかりか、デフレを助長する可能性すらある」ということだ。

例えば低金利の持続を見越してリース会社は短期調達・長期運用という戦略を取る。ユーザは支払リース料が低くなるので、その分製品やサービスを値下げする糊しろが増える訳だ。そして製品やサービスの値下げ競争が続く・・・・・

という訳で超低金利政策は資源の効率的配分という金融機能を麻痺させ、デフレを助長する危険性がある・・・・と私は感じている。

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東芝、円高を逆手にとって利益を上げる(FT報道)

2010年10月26日 | 社会・経済

FTによると、昨日東芝の佐々木社長は世界経営者会議で円高を利用して利益を上げていると発表したと報じている。

記事によると、昨年東芝は「プロジェクト70」というプロジェクトを発足させ、1ドル70円まで円高が進むことを想定して対策を考え始めた。佐々木社長は「昨年10月にプロジェクトを発足させた時、人々はそんな円高になることは絶対ないだろうと言ったが、最近のドル安・円高を見ると、70円は現実離れしているとは言えないかもしれない」と述べている。

2009年4-9月の間、東芝は48%の製品を日本国内で作り、45%の部品を日本ベースのサプライヤーから調達していた。しかし今年の同じ期間では、それぞれ44%、42%に低下した。この生産の海外シフトにより、営業損益ベースで昨年は1円の円高が8億円の営業損失を生んでいたが、今年は1円の円高で7億円の営業利益が出るようになった。この結果半期で東芝は円高により42億円の営業利益を上げた。

なお東芝はユーロ安は引き続き重荷であると述べている。

☆  ☆  ☆

東芝が輸出入バランスの改善で、円高(対ドル)でも利益が上がるように体質改善したことは、円高介入の正当性を主張する人には頭の痛い話だ。FTが東芝の話を持ち出したのは、今の円高を所与のものとして是認し、対策を考えよという主張と平仄を合わせるものだ。同紙は別の記事で市場レートでは円高だが、インフレを調整した購買力平価ベースでは円高ではないと力説している。

ついでにいうとFTは日米の中央銀行の通貨安を目指す取組姿勢の違い、つまり金融緩和策のレベルの違いから長期的な円高は避けられないだろうと述べている。

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