金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

東京の不動産市場、プレイヤー交替の時期か?

2010年10月13日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズにDistress asset fire sales loom in Japan「日本で不良資産の投売りが迫っている」という記事が出ていた。ここでいう不良資産とは商業用不動産。ただし不良資産といっても古びたビルではない。銀座のティファニービルのようにピカピカのビルだ。投資の観点からいうと「良い株」というのは、優良会社の株ではなく、良いリターンをもたらす株であり、「良い不動産」というのは、ピカピカのビルではなく、良いリターンをもたらす不動産である。逆にピカピカのビルであっても、その買値が高くプアなリターンしか生まないとそれは不良資産なのである。

ゴールドマンが2007年にティファニービルを買った値段は380億円で利回りは2-2.5%程度。購入資金を融資したのは外銀で3年のローンは今年期日をむかえる。物件価値が半額に下がり(これはFTの記事以外の情報)、リファイナンスの目処が立たないので、ゴールドマンは物件をノンリコースレンダーに引渡して幕引きをし、レンダーはティファニービルを売りに出すだろうとFTは述べている。別の情報によるとゴールドマンは70数億円のエクイティを注ぎこんでいるがこれは全損になる。

不動産投資で損をするのは、ゴールドマンだけではない。FTによると、新生銀行の日比谷の本店(同行は本店を日本橋に移す予定)を2008年に1,180億円で購入したモルガンスタンレーのファンドも、来年早々に期日が来るローンのリファイナンス目処が立たないと当該ビルをノンリコースレンダーに引き渡すことになるだろう(エクイティは全損する)ということだ。

これらのディールでノンリコースローンを出している外銀は不良資産の整理が重要課題なので、リファイナンスやローンの期限延長ができない状況にある。今年は2006年から07年のブーム時に行われた商業用不動産融資が期日を迎えるので、リファイナンス難から売り物が多く出ると予想される。

高値で不動産を掴んだ投資家がいる一方、底値でそれらの物件を買おうとしている投資家がいる。たとえばセキュアード・キャピタルが運営するSCJ Investment Managementだ。

ところでノンリコースローンを出している日本の銀行はどうかというと、FTは監督官庁のある上級職の「日本の銀行は相対的に健全なので、不良資産を今売却して、ハゲタカファンドに利益を得る機会を与えるより、暫くリファイナンスして様子を見ることを選択する」というコメントを紹介している。

これに対してFTは「問題は邦銀の楽観主義を正当化する理由があるかどうかだ」と述べている。底が近いといわれながら中々底が見え難いのが日本の不動産市場。

今損を出すか、将来の市況回復にかけるか?いずれが正しいかは数年後の不動産市場を待つことになる。

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携帯電話オンリーが世論調査をゆがめる

2010年10月13日 | うんちく・小ネタ

世論調査の一般的方法は、固定電話番号をランダムに選び、電話をかけることで行われる。http://www.nikkei-r.co.jp/phone/method.html

ところが固定電話を持たず携帯電話だけを利用する人が増えてくると、携帯オンリーの人(以下CPOs Cellphone onlys)が世論調査から漏れるため、世論調査の正確性が損なわれるという問題が起きてくる。このことは以前から指摘されているが、米国の中間選挙を前にして、クローズアップされている。

エコノミスト誌はStill worth reading?というタイトルでこの問題を取り上げている。それによると、米国でCPOsの比率は約25%にのぼる。携帯オンリーの人に世論調査に参加してもらうことは、次の点から困難だ。まずCOPsの人は電話に出ることが少なく、かつ世論調査に参加したがらない。また引越しをしても携帯電話をそのまま使用することが多いので、電話番号から居住地を特定することができない。

また米国では自動電話を使って世論調査を行うことが普及している(コストが安いから)が、法律により携帯電話に自動電話から電話をかけることは禁じられているので、携帯電話で世論調査を行おうとするとコストアップになる。

米国で携帯オンリーの人は、「若くて」「白人比率が低く」「平均よりも貧しい」ので、民主党に投票する可能性が高い。

Pew Research社の調査によると、固定電話オンリーの調査を行うと6%共和党寄りの調査結果がでる。そして携帯オンリーの人を調査に加えると民主・共和両党は拮抗するという。今年の中間選挙は37の上院議員選挙の内5つが拮抗、37の知事選の内9つが拮抗しているので、ちょっとしたバイアスが大きな予想外れにつながる可能性がある。

調査機関はデータを修正することでバイアスを取り除こうとしているが、ある調査機関のトップは州ベースやそれ以下の地方選の世論調査結果については特に注意が必要だと述べていた。

ところで日本についてはどうだろうか?

携帯オンリーの人は20代で5割を超えるというデータを見たことがある。日経リサーチがHPで公開している電話による世論調査方法では、固定電話のみを使うと書いているので、バイアスの修正は行っていないと判断される。

20代の人の投票率は低いから選挙結果に与える影響は少ないということだろうか?

だが私はこれから年齢の高い層でも携帯オンリーの人が増えていくだろうと予想している。日本でも世論調査方法の見直しの時期は遠くないかもしれない。

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