金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

消費税3%引き上げ、現実味を帯びる

2011年04月19日 | 政治

今日(19日)読売新聞朝刊は「政府は昨日(18日)早ければ来年度にも消費税を3%引き上げ、復興財源に充てる検討に入った」と一面で報じた。消費税1%は2.5兆円の税収なので、3%で7.5兆円。3%引き上げは3年間の時限措置で、これで復興財源の大半を賄おうという計画だ。このニュースはロイターを通じて世界に流れた。

昨日はたまたまS&PがAAAの米国国債の見通しを「安定的」から「弱含み」に変更した。巨額の財政赤字と政府債務の増加がその理由だ。

世界的に財政赤字の拡大から、国債への信頼が低下している中、日本が震災復興に向けて税収確保策を示さないと、市場の信頼を得られないというタイミングだったのかもしれない。

枝野官房長官は今日の午前中「政府内で消費税の引き上げが検討されていることを明らかにした上で、具体的財源についてなんらかの特定の方法を検討している段階ではない」とコメントしたが、ポイントは前半にありそうだ。

昨日日経新聞が行なった世論調査によると、70%の人は震災復興のための増税に賛成している。消費税の引き上げを実施するタイミングだろう。ところで70%というと菅首相の不支持率も同じ70%だ。

今誰が首相をしても増税は避けられない状態だが、国民として増税を担う以上は、もう少し信頼できるリーダーが欲しいというのが本音だ。

昨日の国会で菅首相は野党議員から、緊急炉心冷却装置が使用不能になってから、緊急事態宣言まで2時間半かかったことを指摘された。首相が原発危機管理の重要性を認識していなかったことの責任問題が広がる可能性がある。

だが、「この人なら菅首相より格段に頼りになる」という政治家が見つからないのが今の日本の大きな問題。半数の人は民主党も自民党も不信任である。効率的で納得のいく復興資金の使い道が見えない中、3%の消費税引き上げだけが一人歩きをしはじめそうだ。

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ロボットは東電の過密な工程表を助けうるか?

2011年04月19日 | ニュース

17日日曜日に東電が発表した原発安定化の工程表によると、6~9ヶ月をメドに、原子炉を100度未満の安定した状態「冷温停止」させることが骨子だが、専門家からはスケジュール感に疑問がでている。

ニューヨーク・タイムズはRadiation poses barrier to repair work at plant「放射能が修復作業の障害」という記事でこの問題を指摘している。

17日日曜日放射能が高くて、人が近づけない二つの原子炉に米国製のロボット2台が入り、放射能濃度を測定した。使われたロボットはパックボットPackBotというiRobot社のロボット。iRobot社はルンバRoombaという日本でも有名なお掃除ロボットを作っている会社だ。パックボットは重さ27.2kg(60ポンド)で、鉄製の腕とトラックターのような無限軌道を持っている。

タイムズによると、そのパックボットが検知したところでは、1号炉の放射線量は1時間辺り49ミリシーベルトで3号炉の放射線量は57ミリシーベルトだった。日本では作業員の年間被曝許容量は250ミリシーベルト(原発事故後引き上げられた)なので、数時間の作業で年間許容量に到達してしまう。原子力安全・保安院の西山審議官は「この放射能のレベルで、6ヶ月~9ヶ月の間で冷温停止に持ち込むには東電はクリエイティブである必要があるだろう」と述べている。つまり今までにないやり方が取られない限り、このスケジュールは難しいということだ。

原子力安全委員会の班目委員長は、昨日記者に「2号炉内の放射能で汚染された水の存在が特に難問だ」と述べる。圧力制御室(格納容器の一部)が破損している2号炉については、破損部分を密封する必要があるからだ。タイムズは班目委員長の「きついスケジュールが安全性の無視につながらないことを確認しなければならない」という言葉を紹介している。

約半月前に米国から到着したパックボットは、約15kgの重さのものを持ち上げることができる。ロボットを使って放射能で汚染した物質の取り除きが進むと東電が立てた計画を遂行できるかもしれない。

しかし私は直感的に東電の工程表は少しタイトではないか?と判断している。それは「政府に言われて作った」という背景からだ。政府は避難関係者から「何時になったら帰ることができるのかスケジュールを示せ」と迫られ、東電に工程表を作らせたのだ。だからボトムアップ的でない。専門家や優れたマスコミはその危うさを嗅ぎ取っているようだ。

ともあれパックボットやT-Hawksのようなラジコン飛行機の力などを総動員して、前例のないオペレーションを展開する必要に迫られている。

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雪崩事故のニュース、結構不正確ですね

2011年04月19日 | ニュース

先週の日曜日(17日)「谷川岳頂上付近で雪崩発生。4名の登山者が重軽傷」というニュースがあった。このニュースを私に教えてくれたのは、GWに一緒に谷川岳に登る予定をしているS君だった。

早速インターネットで正確な情報を得ようとマスコミ各紙を検索したが、雪崩の場所について正しく伝えているメディアは少なかった。例えば「谷川岳頂上付近の標高1,400m地点」などという記述がある。谷川岳の標高は1,963mなので、これではどこなのか分からない。

その中で正しい(と思われる)情報を発信していたのは「スポニチ」と「NHK」だ。この二つは雪崩発生の場所を谷川連峰の北側の「コマノカミノ頭(1,464m)の頂上付近」と特定している。

コマノカミノ頭という名前は、山好きの僕でも今まで知らなかったから、一般の人はまず知らないだろう。「上越のマッターホルン」と呼ばれる大源太山に近い山だから、谷川連峰と呼ぶべきかどうか疑問(谷川岳から10km程離れている)だが、一般受けするように「谷川岳で雪崩」という記事になったのだろう。ただしこのような「誤った情報」は混乱を招く可能性がありそうだ(例えば谷川岳に登っている人の家族に不要な心配を与えるなど)。

ネットで調べてみるとコマノカミノ頭は、藪の多い鋭鋒で登山時期は積雪期のみということだ(夏は道がない)。非常に玄人好みの山なのだ。

山の話はこれ位にして、このニュースはマスコミのあり方について幾つか示唆を与えてくれた。第一にマスコミは正確性よりも一般大衆の分かり易さ・受けの良さを狙う傾向があるということだ。第二に必ずしも発行部数の多い全国紙が正しい報道をしていることはないということだ。第三に正しい(と思われる)情報を得るには、少なくとも複数のニュース源を当ることだ(本当は警察・消防等プライマリーな情報源に当るのが良いが、一々そこまでするのは大変)。第四に読み手が、記事の信憑性を判断できる知識を持っていないと、正しい情報を選び出すことができないということだ。

福島原発などでもこのように「一般受けを狙った不正確ないしは誤った情報」が、大手マスコミから流されている可能性はあるのだろう。ただし原発問題について知見が乏しい私には、雪崩のニュースのように正しいニュースを切り出す自信はない。困ったことだが。

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