中国のインフレに歯止めがかからない。金曜日の政府発表によると、3月の消費者物価指数は過去3年で一番高い5.4%の上昇だった。ニューヨークタイムズのInflation in China poses big threat to global tradeという記事によると、「上海中心部の平均的なアパート(日本のマンション)の価格は50万ドルを超え、成都のよな二番手クラスの都市でも典型的な住宅価格は住民の年収の25倍を超える」ということだ。
上海市民の年収は、上海市(人力資源和社会保障局)によると42,789元、1ドル6.53元で換算すると6,552ドルだから、上海中心部のマンションの価格は年収の76倍になるという計算だ。
東京に置き換えて考えると、東京の平均世帯年収は約8百万円だから、上海中心部のマンションはその76倍の6億円ということになる。また成都のケースを年収倍率で東京に引きなおすと、平均的な住宅価格は2億円ということになるから、異常な世界だ。
先進国の新築住宅価格と年収の関係について調べてみると、大体住宅価格は年収の4倍から6倍である(住宅経済データ集より孫引き)。例えば米国の場合、平均年収は6.1万ドルで住宅価格は24.8万ドルで年収倍率は4倍だ。また日本(全国・戸建)の場合は年収は717万円で、住宅価格は3,551万円、年収倍率は4.95倍だ。
CNNが無料で提供してる「住宅ローン借入可能額計算表(勝手な訳)」http://cgi.money.cnn.com/tools/houseafford/houseafford.html
の積極モデル(住宅ローン返済額の年収に占める割合を33%とする)で、年収1,000万円相当の人が頭金なしで借入可能額を計算すると、年収の4.6倍の4,600万円強となる。
つまり余程の賃金上昇でもない限り、年収の25倍を超えるような住宅は一般的に購入できるものではない。
無論中国政府もそのことは十分理解していて、不動産価格の抑制と向こう数年間にわたり、安い住宅を提供するために数千億円相当の支出を行なうことを約束している。
だがアナリスト達は中国の経済成長は、インフレを助長する不動産開発と政府の道路、鉄道などのインフラ投資と連携していると指摘する。2011年第1四半期の固定資産投資は前年同期に較べて25%増加、不動産投資は実に37%増加している。
一般の中国人が住宅を入手できるようになるためには、不動産価格が下落するか、賃金が上昇する(あるいはその両方がおきるか)ことが必要だ。住宅価格の急激な下落、つまりバブルの崩壊は、不良債権の激増を招くし、賃金の上昇は更なるインフレ圧力を生み出す。タイムズはクレディスイス香港のエコノミストTao氏の「中国は新しい時代に入りつつある。過去10年間インフレ率は1.8%程度だったが、次の10年のインフレ率は5%近いだろう」という言葉を紹介している。
5%のインフレ率が中国の経済と社会にどのような影響を持つか?また日欧米など世界の経済にどのような影響を持つか?これは目を離せない問題である。