金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

放射線の有害性をどのように評価するのか?

2011年04月05日 | ニュース

福島原発事故に関して、何とも歯切れの悪いのが放射能漏れが人体に与える影響に関する政府のコメントだ。「どうして安全だとか危険だとかはっきり言えないのか?」と疑問を感じている人も多いと思う。私もその一人だったが、ニューヨーク・タイムズのRadiation is everywhere,but how to rate harm?という記事を読んでその疑問に一つの回答を得たので紹介したいと思う。

まず結論からいうと、放射線被曝による人体への影響予想は、広島と長崎で原爆被爆後生存した20万人(タイムズによると4割以上が生存中)に関する研究をベースに行なわれている。この問題を研究しているDouple博士は「原爆の被爆者は全身に一度に放射線を被曝するが、原発事故による被曝は全身の被曝ではなく、水中や空気中の放射性物質を少しづづ吸収するものである。この少量被曝によるリスクを原爆による大量被曝の延長で推定して良いかどうか疑問が残る」と述べる。

米国では放射線の被曝量の単位としてレムremを使う(1ミリシーベルト=0.1レムである)。

米国環境保護庁によると、人間は自然バックグラウンドから毎年0.3レム(3ミリシーベルト)の放射線を受けている。もし一万人がこれに加えて、1レム(10ミリシーベルト)の放射線を生涯受け続けると、環境保護庁は5ないし6のガンによる超過死亡を引き起こすという。一万人のグループでは通常約2千人が放射線が原因でないガンで死ぬだろうが、それに加えて5,6人が放射線が原因のガンで死ぬという意味だ。

放射線は確かにガンを引き起こすリスクを高める。しかしそのリスクは一般に予想されるより低いと前述のDouple博士は述べる。

原爆被爆者の中に最初に出現するガンは白血病で、一つの研究対象グループの12万人の内219人が1950年から2002年の間に白血病で死亡している。しかしその内98名つまり45%だけが、放射線被曝により白血病で死亡した「超過死亡」である。

ただし被曝量と白血病の関係を見るとリスクは被曝量と相関していることは明らかだ。100レム以上の一番高い被曝量を受けた人の86%は放射線による白血病で死亡した。これに較べて10レムから50レムの被爆者の白血病による死亡率は36%で、0.5レムから10レムの被爆者の死亡率は5%に過ぎない。

10万人の研究対象者について、肺がんなどの固形ガンで死亡した人は7,851名だった。この内放射線によりガンになったと推定される人は850名11%だった。

Douple博士は被曝量が極めて少なくなると、ガンにかかるリスクも極めて低くなる。しかしこれ以下なら安全という「閾(いき)値」はないという。もっともこれには反対意見を述べる人もいるようだ。

いずれにせよ、少量の放射線被曝が人体にどのような影響を与えるかは、前例が極めて少ない領域なので、専門家の間でも一致した見解が出ていないところがあるということだ。例えば福島原発から400mの地点では1時間当り0.1レム(1シ-ベルト)の放射線が観測され、研究者達は4日間その被曝を受けるとガンのリスクが高まるという点で一致しているが、幾人かの人はもっと短い時間の被曝でもガンのリスクが高まるだろうと主張している。

☆   ☆   ☆

福島原発事故以降、各地で放射線の量は増えていることが観測されるが、それでも中国の都市で観測された放射線量より低いそうだ。何故中国の放射線量が多いかというと、核実験の影響だという説がある。

摂取しないことに越したことはない放射性物質。これ以下なら安全という閾値がないことに不安を感じるか、安堵を感じるかは受け手のものの考え方によるだろう。

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キーボードの上のワイルドライフ

2011年04月05日 | パソコン

週末の日経新聞にパソコンのキーボードの隙間にたてるかわいらしいメモの広告が出ていた。

今日お昼休みに銀座の伊東屋で写真の「うさぎ」と「アカシア」を買ってみた。各々20枚入っていて二つで9百円だった。メーカーはHI MOJIMOJIという日本の会社だ。

うさぎはともかくアカシアの葉っぱや下草の細かい切込を見ると簡単にメモに使う気にはならない。

最近アシスタントの女性に少し厄介な仕事を頼んだことがあり、ちょっと気遣いを示したいと思っていたので、プレゼントしたら喜んでいた。この手の机の上の小道具はやはりオジサン向けではなく、女性向けなのである。

気の滅入る話が多い世の中、うさぎの伝言がキーボードに残っているとほっと気持ちが和むことがあるかもしれない。

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低レベル汚染水放出の影響

2011年04月05日 | ニュース

4月4日夜東京電力は福島第一原発の施設内に溜まっている低レベルの放射線物質に汚染された水を海に放出するという措置に踏み切った。

低レベルの汚染とはいえ、放出が予定されている汚染水は法律で規制されている放射能の100倍のレベルだ。

何故低レベルの汚染水を海に放出せざるを得なくなったか?というと、2号炉付近から流出する高レベルの放射能汚染水を貯える設備がないので、低レベルの汚染水を海に放流することとなった。高濃度の汚染水の放射能は、法定限度の10,000倍である。

放射能の汚染度が法定の100倍のレベルというのは、どれ位健康に影響があるのか?というと、その付近の魚を1年間毎日食べて、0.6ミリシーベルトの放射線物質を摂取することになる東電は発表している。これは1年間に放射能を浴びても差し支えないとされる1ミリシーベルト以下の水準ではある。

東電は汚染水を貯えるためにタンクの手配をしているが、プラントサイトに到着するのは4月中頃の見込みで喫緊の事態に間に合わない。

「悪貨は良貨を駆逐する」ではないが「高濃度汚染水は低濃度汚染水を駆逐する」ということなのだろう。だが一体汚染水の海への放出はどれ位続くのだろうか?日本政府は福島原発から漏れる放射線で汚染された水の流出を止めるには、数ヶ月かかる述べているが、まさかそれまで海への放出が続くとは思いたくないが・・・・

ニューヨーク・タイムズは東京海洋大学名誉教授・水口憲哉氏のコメントを紹介している。「海水中の放射能物質のレベルは増加している。このことは問題の悪化が続いていることを意味する」

放射能で汚染された魚や魚介類がどれ程人体に影響を持つか?ということになると今のレベルでは実害はそれ程高いとは思われない。だが漁業にはすでに深刻な影響がでている。

タイムズは千葉県の夷隅の漁連の責任者の話を紹介している。それによると漁連では収穫した魚の放射能を測定したが放射能は検知されなかった。しかしイナダの値段は半分以下に下落している。

漁連の責任者は「政府は健康上問題はないと言っているが、一般大衆が非常に警戒心を抱いていることは間違いない。我々は傷ついている」と述べる。

NHKも東電や国の説明責任を求めている。

低レベルとはいえ放射性物質を海に放出するという重大な決断が何の前触れもなく、急に発表されたうえ、そこまでせっぱ詰まった状況だったのか、国や東京電力も4日の記者会見で、十分に説明しきれていません。事故の発生から3週間余り、みずから放射性物質を海に放出するという異例な事態となっており、国や東京電力には、海への影響の監視の強化や、汚染された水の放出をできるだけ抑えるための対応が急がれるとともに、こうした措置を取ったことへの詳しい説明が求められます。

東電による放射能低汚染水の海への放出は、環境や海産物に対する実害よりも、日本の海産物全体ひいては海産物全体に対する消費者の忌避感を高めるという非常に大きな影響をもたらすことになるだろう。

コメント (2)
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