金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

松田公太氏の年金70歳開始論、粗雑で乱暴じゃないの?

2011年04月01日 | 社会・経済

日本のタリーズコーヒーの創業者で、みんなの党の参議院議員・松田公太氏がツイッターで次の意見を述べていた。

RT @: 子ども手当を被災地に送るのは素晴らしいと思いますが、将来の日本のことを考えるのなら、子育て世代のお金を被災地に送るより先に、世代間格差で優遇されている中高年のお金をまず送るべきではないでしょうか?年金を暫定で70歳開始にするとかどうでしょう?

平均的に見ると世代間の所得格差があることは事実で、議論を提起するための極論としての意味はあるかもしれないが、参院議員の発言としてはやや粗雑で乱暴だといわざるを得ない。

というのは現在の雇用延長法の下で、企業は「定年延長」「継続雇用」「定年の廃止」を求められてるが、多くの企業は「嘱託としての再雇用制度」で対応している。この場合60歳から65歳の再雇用期間について公的年金や企業年金の給付水準を考慮しながら、給与を低く抑える制度設計を行なっている。

また65歳以降については、雇い主に雇用義務はないから、年金のみが収入源になっている老齢者が多いはずである。つまり老齢者が一律に優遇されているというのは少し乱暴な話なのだ。

従って年金支給を70歳開始とすると、70歳までの間の雇用をどうするか?ということを考える必要がある。年金の支給開始年齢の引き下げは欧州諸国でも議論され一部実施されているが、雇用面の手当ては考えられているはずだ。震災支援のために年金支給開始をいきなり70歳にするというのは、粗雑で乱暴な話なのである。

ただし年金受給者の中には、かなり高額の企業年金を受給している人や不動産賃貸収入等の収入により、収入の高い人がいることも事実で、それらの人への課税を増やすということは検討されるべきだろう。

例えば年金受給額の大きい人の「公的年金等控除額」を引き下げることで、課税所得を大きくすることなどが考えられるだろう。

ついでにいうと、震災復興に対する財政不足を補うには、公平性と制度的即効性を考えると所得税の定率増税しかないのではないか?と私は考える。消費税の引き上げは必ず実行しないといけないが、時間軸を考えると定率増税しかなさそうである。

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福島原発のプルトニウム、最大の危険要素ではない

2011年04月01日 | ニュース

米国の外交専門誌Foreign Policyに「福島原発から漏れているプルトニウムはどれ位危険か?」という記事が出ていた。

東電はプルトニウムは人間の健康に危険を及ぼすレベルではないと言っているが、原発事故以降の様々は「楽観的情報」に失望してきた国民としては、額面どおり受取にくいところはある。

プルトニウムが危険視されるのは、毒性の高さと半減期の長さだ。福島原発に使われているプルトニウム239の半減期は2.4万年だ。毒性についてFPは1995年のLawrence Livermore National Laboratoryのレポートから「プルトニウムを摂取して直ちに致死する量は0.5g」と紹介している(比較としてシアン化物(青酸カリなど)は、0.1gの摂取で死に至る)。

福島原発から漏れたプルトニウムは、空中に飛散していないが(プルトニウムは重たい)、万一飛散したとして、20ミリグラムのプルトニウムを摂取すると恐らく2,3ヶ月の内に死亡するとFPは述べる。ただしプルトニウムに触れるだけではほとんどリスクはない。

可能性としては将来プルトニウムを摂取する可能性はあるが、それでもリスクは相対的に小さいとFPはいう。そのリスクの程度はプルトニウム0.0001ミリグラムを摂取すると、ガンで死亡する確率が1,000に対して200から1,000に対して201.2に増加するということだ。

しかし現在検出されているプルトニウムの量は、人が吸引するレベルとは考え難い。また飲料水から摂取するリスクも相対的に小さい。プルトニウムは重たく容易に水に溶けないからである。仮に10オンス(283.5g)のプルトニウムを水に入れると、約3ミリグラムだけが水に溶け(つまり10万分の1だけ)、残りは沈殿する。また3ミリグラムのプルトニウムを摂取してもガンで死亡する可能性が0.6増加するに過ぎない。

FPはプルトニウムはマスコミの見出しを賑わせているだろうが、福島原発から漏れている放射性物質の中で一番危険な物質ではないと述べる。

ヨウ素とセシウムは半減期はプルトニウムに較べて半減期は短いが、漏れている量が多いこととはるかに遠くまで飛散する。毒性はプルトニウムより低いがガンを発生させるリスクはあると警鐘を鳴らす。

FPの記事はまず一番のプライオリティは、原発から蒸気とともに漏れるヨウ素やセシウムを封じ込めることだということを示唆している。

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