学者の中には暇な人がいるものである。ロイターによるとシカゴ大学のオルシャンスキー教授は米国大統領の寿命を調べて、一般の常識と反して米国の大統領は一般人より長生きしていることを米国医学界の雑誌に発表した。
教授がこの研究を行なった動機は、今年の夏オバマ大統領が50歳の誕生日を迎えた時、メディアが大統領就任前と就任後の写真を較べて、大統領の髪が白くなりしわが増えたを強調して「最高司令官は通常の人の2倍早く年を取る」というよく言われる話を繰り返し伝えていたからだ。
ところが34人の大統領の内自然死した23名については、寿命は同時代の男性より長くしかもしばしば大幅に長生きした。たとえば最初の8名の大統領については平均寿命は79.8歳だった(なおロイターはその時代の平均寿命が40歳以下だといっているが、これは余り正しい物差ではない。つまり当時は幼児死亡率が相当高いので成人年齢における平均余命で比較するべきだろう)
オルシャンスキー教授は大統領がストレスが高い仕事にもかかわらず長生きした理由は「高い教育」「富」「優れた医療へのアクセス」の三つが揃っていたことだと推論している。
さて私も暇があったので日本の司令官の例で「司令官は通常の人より早く年を取り短命なのか?」を調べてみた。対象はNHKの「坂の上の雲」の日露戦争とした。
陸軍からは日露戦争に従軍した大山巌以下6名の大将を選び、海軍からは東郷平八郎大将と上村・片岡という二人の中将を選んだ(海軍大将は東郷一人なので)。
10名の将軍の内自決した乃木大将を除いた9名の平均寿命は72.6歳。当時の40歳男子の平均余命が66.8歳だから彼等は一般人よりかなり長生きしたといえる。
一番長生きしたのは東郷平八郎で86歳。次は陸軍の奥保鞏で85歳。一番短命だったのは児玉源太郎で55歳の時脳溢血で急逝した。
どうして彼等軍司令官達は長生きしたのだろうか?以下は私の思いつきの仮説。
・彼等は元々健康で頑強かつ幸運の持ち主だったから軍人のトップに立つことができた。遺伝等により健康に問題のある将兵はもっと早い段階で軍籍を離れたり逝去した。
・高級将校・将官クラスは給与・食事・医療へのアクセス等の面で一般人よりはるかに優っていたので長生きすることができた。
・「最高司令官は2倍早く年を取る」という常識が統計的根拠によるものでなく、見た目の老け具合等の判断からくる俗説に過ぎなかった。
さて正解はどのあたりにあるのだろうか?