金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

大統領、見た目はふけても実は長生き

2011年12月07日 | うんちく・小ネタ

学者の中には暇な人がいるものである。ロイターによるとシカゴ大学のオルシャンスキー教授は米国大統領の寿命を調べて、一般の常識と反して米国の大統領は一般人より長生きしていることを米国医学界の雑誌に発表した。

教授がこの研究を行なった動機は、今年の夏オバマ大統領が50歳の誕生日を迎えた時、メディアが大統領就任前と就任後の写真を較べて、大統領の髪が白くなりしわが増えたを強調して「最高司令官は通常の人の2倍早く年を取る」というよく言われる話を繰り返し伝えていたからだ。

ところが34人の大統領の内自然死した23名については、寿命は同時代の男性より長くしかもしばしば大幅に長生きした。たとえば最初の8名の大統領については平均寿命は79.8歳だった(なおロイターはその時代の平均寿命が40歳以下だといっているが、これは余り正しい物差ではない。つまり当時は幼児死亡率が相当高いので成人年齢における平均余命で比較するべきだろう)

オルシャンスキー教授は大統領がストレスが高い仕事にもかかわらず長生きした理由は「高い教育」「富」「優れた医療へのアクセス」の三つが揃っていたことだと推論している。

さて私も暇があったので日本の司令官の例で「司令官は通常の人より早く年を取り短命なのか?」を調べてみた。対象はNHKの「坂の上の雲」の日露戦争とした。

陸軍からは日露戦争に従軍した大山巌以下6名の大将を選び、海軍からは東郷平八郎大将と上村・片岡という二人の中将を選んだ(海軍大将は東郷一人なので)。

10名の将軍の内自決した乃木大将を除いた9名の平均寿命は72.6歳。当時の40歳男子の平均余命が66.8歳だから彼等は一般人よりかなり長生きしたといえる。

一番長生きしたのは東郷平八郎で86歳。次は陸軍の奥保鞏で85歳。一番短命だったのは児玉源太郎で55歳の時脳溢血で急逝した。

どうして彼等軍司令官達は長生きしたのだろうか?以下は私の思いつきの仮説。

・彼等は元々健康で頑強かつ幸運の持ち主だったから軍人のトップに立つことができた。遺伝等により健康に問題のある将兵はもっと早い段階で軍籍を離れたり逝去した。

・高級将校・将官クラスは給与・食事・医療へのアクセス等の面で一般人よりはるかに優っていたので長生きすることができた。

・「最高司令官は2倍早く年を取る」という常識が統計的根拠によるものでなく、見た目の老け具合等の判断からくる俗説に過ぎなかった。

さて正解はどのあたりにあるのだろうか?

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欧州危機の本質は?~ブレア元英首相の話を敷衍して

2011年12月07日 | 社会・経済

今日(12月7日)の日経新聞朝刊にブレア元英首相のインタビュー記事が出ていた。特に興味を引いた点はブレア氏が「西側諸国では、社会、技術、人口動態の変化を受けて、第2次世界大戦後に築いた社会制度は抜本的な改革が必要になっている。具体的には福祉、年金など社会保障や公的サービスだ。ユーロ圏の危機は、改革を加速する必要があることを表に出しただけで、これらの改革はもともと必要だったものだ」と指摘している点だ。

今まで高格付を維持しているドイツや北欧諸国を見ると、これらの国は10数年前から数年前にかけて構造改革を行なっている。たとえばドイツは2003年に10年ぶりにマイナス成長に陥り、ユーロ圏の足を引っ張っているといわれたが、2003年12月にアジェンダ2010という構造改革法案を制定し、労働市場や社会保障制度の見直しに着手した。それが成果を生み、近時は産業立地国として強い競争力を誇っている(逆にそのことが南欧諸国の経常赤字につながっているのだが)。

つまり傷みを伴う構造改革に取り組んだ国が競争力を高め財政の健全性を保っているということができる。

前世紀の終りから今世紀にかけて加速した情報通信技術の発展や金融技術の複雑化(発展と呼ばずあえて複雑化と言おう)は、一国内で働く人々の所得格差を拡大した。

所得格差の拡大は「取り残された者」の政治的不満を増大させる。それに対し政治家は「飴」を持って対応した。たとえば米国ではブッシュ前大統領時代に「貧困層でも自宅が保有できる」ような住宅政策を展開した。それが金融技術の複雑化とあいまって「サブプライムローン」ブームを生み、やがてリーマンブラザースの破綻に終わったことは周知のとおりだ。

多くの先進国では、高齢化に伴う社会保障費に増大に対して、必要な増税や社会保険料の引き上げで対応せず、国債の増発で対応した。何故なら増税は何時の場合も不人気だからだ。

国内で国債を消化する力のない南欧諸国は、ユーロ圏内の銀行による国債購入に依存した。ブレア氏の主張を補足するとこのようなことになるのだろう。つまりは放置しておけばいずれは火を噴く問題が表面化したのが、2年前のギリシャ危機に始まった欧州問題だということだ。今までのところ国内に預貯金が豊富な日本では、貸出運用難に苦しむ銀行が国債を大量に抱え込んでいる。だが「いつまでもあると思うな親と金」である。このままの状態が続くと日本国債が国内だけで消化できなくなる日は遠い将来のことではないだろう。

このことは日本が痛みを伴う改革に一日も早く取り組まないと問題解決はますますこ困難になることを示唆している。そして日本の改革は「社会保障と税の一体改革」だけではなく、技術革新や人口動態の変化あるいは後戻りのないグローバリゼーションに対して、どのように対応するかという労働市場や規制で守られた非効率的な産業に対する広範な変革を伴わないと経済成長が伴わず、結局「社会保障と税の一体改革」に必要な財源が生まれないということになるのである。

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