ギャラップ調査に「アメリカ人は年収がどれ位あると豊かと感じるのか?」という調査が出ていた。それによると年収6万ドル以下で豊かだと感じる人は18%、9万ドル以上10万ドル未満が12%、10万ドル以上15万ドル未満が23%、15万ドル以上30ドル未満が18%だった(以下省略)。4%の人は年収100万ドル以上になって豊かだと感じるという。中央値(満足する年収順に並べて丁度真ん中に来る人)は15万ドルだった。
15万ドルという数字は議会で税制の議論が行なわれる時の富裕層の所得水準よりは少し低い。
15万ドルというと現在の為替レートで換算すると12百万円弱だ。では日本人はどれ位の年収で豊かさを感じるのだろうか?ピッタリくる統計データを見つけることはできなかったが、日銀内の金融広報中央委員会が平成20年に発表している「家計の金融行動による世論調査(二人以上の世帯)」を見ると次のようなことが分かる。
「経済的な豊かさを実感している」人の割合は4.3%で、「経済的な豊かさをある程度実感している人」の割合は32.8%である。一方所得の分布を見ると「税引き後所得で年収1,200万円以上の人」の割合が4.2%だ。また年収500万円以上の家計の割合は39.8%である。「豊かさ」「ある程度の豊かさ」と年収の間には強い関係があると推測される。
もっとも「経済的な豊かさ」を構成する要素は年収が一番ウエイトが高いが年収だけではない。65.8%の人が「豊かさの条件」に「ある程度の年収の実現」をあげ、49.3%の人が「ある程度の金融資産の保有」をあげている(重複回答あり)。
従って上記の税引き後年収1,200万円が豊かさのスレッシュホールド(敷居)だという結論は統計学的にはやや乱暴だけれど直感的にはかなり妥当な結論だといえそうだ。
仮に税率を2割とすると税前の年収では1,500万円が閾値となり、実感的な物価水準(つまり1ドル=100円程度)で比較すると米国の15万ドルと極めて整合的だと判断できるのである。
もっとも年収が少々増えてもその分贅沢をするから豊かさの実感を伴わないなど色々な議論がある。一方欲を抑えて足るを知ることができればもっと少ない年収でも豊かさを感じることはできる。米国で2割近い人が年収6万ドル未満で豊かさを感じていることはこのことを示している。
なお前述の「金融行動による家計調査」によると、75%の人が「心の豊かさ」に必要なものとして「健康」をあげていた(「経済的豊かさ」は「家族とのきずな」とならんで50%で2番目)。収入にこだわるより、運動と適切な食事で健康を重視し、規則正しい生活をすることが心の豊かさにつながるということなのだろう。