ニューヨーク・タイムズに「地球温暖化で氷河が後退し、一部の高所で登山がより危険になった」という記事が出ていた。
ちょっと考えると「寒い山が暖かくなると登り易いのではないか?」という気がしないでもないが、温暖化で氷河や永久凍土層が融けると、ザクザクで手の付けられない岩屑の塊が残される。
ザクザクのガレ場がしっかした雪の斜面よりはるかに危険で扱いにくいことは少し登山の経験がある方ならば容易に想像が着くだろう。
ニューヨーク・タイムズによるとアルピニスト・マガジンの編集長マイケル・ケネディ氏は「温暖化による変化のスピードは速く多くの登山者を慌てさせている。大部分の登山ルートはより困難になっている。特に登山者を悩ませるのは、ヒマラヤ山脈、ヨーロッパ・アルプス、カナディアン・ロッキー、ペルー山塊だ」と言っている。
ヒマラヤ登山では氷河上のクレバスやアイスフォールにジュラルミンのハシゴを固定することが多いが、固定するためのアイスハーケンが5月には氷が解けて緩むという。またベースキャンプいたるキャラバンルートでも土砂崩れが起きて、馬による荷揚げが不可能になる場合もあるという。
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氷河のない日本(立山の御前谷などで氷河が発見されたという話題はあったが・・・・)では、温暖化が登山の危険性を高める可能性がないか?というと必ずしもそうではない。
一つの危険性は冬の雪崩の発生状況が変わっているということだ。冬の降雪期に思わぬ暖かさから雨が降り、雪に浸み込んだ雨水が凍り、その上に再び雪が積もると非常に不安定になり、雪崩が発生しやすくなる。
過去何十年と雪崩が起きていないような場所でもある日突然雪崩が起きる危険性がある訳だ。
山で経験や過去のデータは重要だが、それに頼りすぎることも危険である。地球温暖化は日本の雪山登山にも新しいリスクをもたらす可能性がある。