野田首相の訪中時に、温家宝首相との間で合意に至った日中の金融連携。両国とも具体的なタイムテーブルを示していないが、「日中貿易の人民元建または円建決済の促進」「人民元と円の直接取引市場の育成」「人民元と円の債券市場の育成」などに向けてワーキングチームを設立することが確認されている。また日本は来年から中国国債を購入することで、外貨準備における人民元のウエイトを高めると予想される。
3.2兆ドルという世界最大の外貨準備額を持つ中国と1.3兆ドルという世界第二の準備額を持つ日本の金融連携は世界の通貨地図を変える可能性があるだけに米国も関心を払っている。
ニューヨーク・タイムズはジョージタウン大学のカプチャン教授の「中国政府は国際経済が過剰にドルで占拠されていると信じていることを明らかにしている。彼等は中国の勃興により、国債システムはもっとバランスのとれた構成に向かうべきだと信じている」というコメントを紹介している。同教授はまた「人民元は完全な兌換性がないため、直ぐに国際的な準備通貨としてドルと競合することはないが、両国の合意はその方向に向けた小さな一歩だ」とコメントしている。
また同紙は、人民元は米ドルに対して40%、日本円に対して45%過小評価されているが、中国が通貨グリップを緩めると人民元が上昇し、輸入力が上昇して日本にプラスになると分析している。また実務的な面では両国が直接取引を行なうことで、取引コストを削減し、為替レートの変動を回避する効果がある。
この合意が米国にどのような影響を与えるかという点については、同紙は「短期的には人民元に対するドル安に作用し、対中国貿易赤字の改善に資するだろう」というノートルダム大学のジェフリー・バーグストランド教授のコメントを紹介している。
また同教授は「人民元はアジアの中で重要性を増して行き、米ドルの重要性は低下するだろう」と述べている。もっとも現時点では米ドルに具体的な影響を及ぼすよりは「象徴的」なものだという見方が多い。
原発事故収束宣言などで急速に支持率を落としている野田首相だが、金融連携につていは評価しても良いのではないだろうか?もっとも概念的な合意が具体化するには相当な紆余曲折がありそうだが。