金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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経常収支縮小は危険な兆候?

2014年05月13日 | 金融

財務省が昨日(5月12日)発表した国際収支統計によると、4月の経常収支は市場予想を大きく下回る1,164億円(季節調整後では7,829億円の赤字)だった。2013年度全体では7,899億円の黒字にとどまった。

新聞の見出し(たとえばWSJ)では「悪化する日本の経常収支 輸出競争力の回復に疑問」といった文字が躍り、輸出競争力の回復が遅れていることや燃料輸入増などが経常収支悪化の原因とされることが多い。

ミクロレベルで見ると、経常収支は車の輸出が増えた・減ったなどということで動くが、マクロレベルでは経常収支は「貯蓄ー投資」である。

なぜか?というと「三面等価の原則」により、生産=分配=支出であり、分配は①「消費+貯蓄」、支出は②「消費+投資+経常収支」である。①と②の式から消費を取り去ると 経常収支=貯蓄ー投資となるからだ。

つまりマクロベースで見ると貯蓄と投資の動向が長期的な経常収支を決めるということになる。過去の日本は貯蓄に較べ、投資が少なかったから、その差額が海外に投資された。米国は逆で国内に投資機会が多いので、外国から資本を輸入するため経常収支は赤字になる。なぜ資本を輸入すると経常収支が赤字になるか?というとマクロベースで見ると経常収支と資本収支(外貨準備高を加えたもの)は、矢印の方向は逆で絶対額は等しくなるからだ。

以上のようなことを踏まえて、国際機関や市場は日本の今後の経常収支はどう動くと推測しているのか?

CNBCに掲載されたIronFX GlobalのGittler氏の記事のポイントを紹介しよう。

  • IMFは日本の経常収支はGDPに対する比率でも絶対額でも昨年ボトムアウトして、向こう数年間徐々に拡大する予測している。
  • しかし市場はもう少し楽観的ではない。市場は2015年と2016年に回復する前にもう少し経常収支の縮小が進行すると予測している。
  • 見解の相違は日本の貯蓄動向の予想にある。投資は2009年にボトムアウトし、その後わずかな増加を続けていて、IMFはこの傾向が続くと予想する。一方貯蓄についてIMFは昨年底を付け、極めて緩やかなペースだけれど上昇を続けると予想している。
  • しかしGittler氏は「日本の貯蓄が緩やかに増加する」という推測に疑問を投げかける。日本の65歳以上の人口比率は1990年の12%から今年の25.3%(推定値)に増加し、2020年には27.8%になると予想される。高齢化により年金基金の取り崩しによる年金支払いを含めて、貯蓄の取り崩しが進むはずだ。

そしてGittler氏はやがて日本で投資が貯蓄を上回る日つまり経常収支が赤字になる日が来ると予想する。経常収支が赤字になると日本は海外投資家に国債を販売しなければならない。それは必然的に金利の上昇を招く・・・・・

金利の上昇は国債利払い額の拡大により一層財政赤字を拡大する。

ということを踏まえて同氏は円は今後数年低下傾向を続けると予想するのである。

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