投資銀行マンの重要な能力の一つは投資テーマにうまい愛称をつけることだろう。CNBCによると、ゴールドマンザックスは先週「女性の労働参加率(女性労働力率)向上が経済成長のドライバーになる」というレポートを発表した。ウーマノミクスは新しい経済成長のバズーカ砲になるか?というのがCNBCのタイトルだった。
レポートによると、高齢人口が4割を占めることで日本の総人口は2060年までに3割減少する。その穴埋めには女性の労働力の活用が不可欠というのがゴールドマンの主張で、もし女性の労働参加率が男性並みの80.6%に達すれば、GDPは12.5%拡大すると同社は推測している。
女性の労働参加でGDPが拡大すると、女性の収入向上で購買力が拡大するからだ。
ちなみに独立行政法人 労働政策研究・研修機構の資料を見ると、20-24歳の労働参加率を見ると、日本の参加率は7割程度でアメリカ・ドイツ・スウェーデン等とほぼ同一レベルである。労働参加率は25-29歳にかけて上昇し、日本では77%に達する。この年齢階層ではスウェーデンの労働参加率が少し高いが大きな差ではない。
欧米先進国と比較した場合の大きな違いはその次の年齢階層で顕著になる。つまり結婚・出産・育児が重なる30代になると日本では女性の労働参加率が一度低下する(30-34歳で67.8%、35-39歳で66.2% 2010年度)。
40代になると労働参加率が回復するのでM字状のカーブが形成されるが、他の国ではこのようなカーブは見られない。なお研究・研修機構のレポートによると「M字カーブはアメリカや欧州でも1970年代には見られた現象」である。つまりこの問題については日本は欧米より3-40年遅れていると考えてよいだろう。
女性の労働参加率をこれ以上高めることができるかどうかの最大のカギは出産・育児で離職する女性をどれだけ減らすことができるかどうかという国・自治体・企業・家庭の努力にかかっている。
次の問題は女性が単純労働のようなローエンドの職種にとどまることなく、管理職や経営職のようなハイエンドのポジションに到達できるかどうかという点だろう。
ゴールドマンによると、女性管理職が多い企業(上位4分の1)の過去3年のROEは平均より10%高く、女性管理職が少ない企業(最下位の4分の1)ではROEは低いかマイナスだった。
私見を述べれば、女性管理職の割合とROEの間には「因果関係」ではなく単なる「相関関係」があるだけかもしれない。つまり女性が管理職として進出しやすい企業は、インターナショナルで、ハードウエアよりはソフトウエア的で、おしゃれで・・・などと現在の日本でROEが高くなる傾向がある会社が多いということだ。
一方男性管理職がはばをきかす会社は、ドメスティックで、ハードウエア的で、泥臭い・・・のでもともとROEが低いとも考えられる。
とはいえ女性に優しい会社は恐らく環境保全にも配慮しているはずだ。
投資の観点からは、女性の活用などSocialな面、環境保護意識Environment、企業統治Governanceに注目したESG投資(銘柄)という考え方がある。このような会社の株を買うということもウーマノミクス推進の一助かもしれない。