昨日(6月24日)安倍首相が正式に発表した新経済戦略。法人税引き下げや規制緩和が柱になっているが、その評価についてWSJは「株式投資家には歓迎すべき幾つかの理由があるが、日本が抱える大きな問題を解決するには不十分」という評価を下している。
株式投資家が歓迎する理由は、法人税の減税とGPIFの株式投資割合を増やすことなどだ。政府は約36%の法人税率を30%以下にするという方針を打ち出している。仮に税率が29%になるとTOPIX銘柄の企業収益は6-7%増加すると野村證券は予想している。
もっとも新成長戦略では目標は設定されているが、いかにしてそれを達成するからは明示されていない。たとえば法人税減税分を代替する財源をどこに求めるか?という具体策が示されていない。
労働市場の改革では年収1千万円以上の専門職に対してホワイト・カラーエグゼンプションを導入することを認める方針だ。このホワイトカラー・エグゼンプションについては「労働時間を自由裁量にする変わりに残業代が支払われない」という説明が行われている。ポイントは「自由裁量」に焦点をあてるか「残業代が支払われない」に焦点をあてるかである。私が昔アメリカで仕事をしていた時、新卒クラスの現地社員を何人か採用したことがあったが、将来融資業務等でオフィサーになることを目指している連中の希望は「残業代はいらないからホワイトカラー・エグゼンプションで採用して欲しい」というものだった。これは残業代を貰うと「クラーク」(事務職)扱いになるからである。人生のスタート点でクラークのスタンプを押されるのは嫌だ。自分は「自由裁量」で自分の人生を切り開くホワイトカラー・エグゼンプションを選択したいというものだった。このような経験もあり私は専門職は年収に関わらずホワイト・カラーエグゼンプションで良いと考えているので、政府の成長戦略には物足りまさを感じている。
もっとも市場が注目していたのは、解雇ルールの緩和だったがこちらはほとんど進展がなかった。
WSJはGiven Japan's suddely tight labor market, this would seem the time to experiment with such moves.
「日本の突然の労働市場の逼迫を考えると、これは新しい試み(解雇ルールの緩和等)を試すチャンスだったと思われる」と述べている。
さて株式市場が新成長戦略を受けて今後上値を目指すか?という点について私は否定的な見方を持っている。少なくとも短期的にはだ。
というのは法人税の減税やGPIFの資産配分変更については株式市場は先月末からのラリーで先取りしているからだ。だからむしろそれ以上の良い材料がないと少し売られるだろう。
そしてもう少し長い目では、投資家たちは新成長戦略の工程表とそれを遂行する安倍内閣の意思の強さを確認しにいくだろうと思っている。