昨日(6月13日)日本橋に出かけたついでに、以前から「来てください」と言われていた某証券会社のいわゆるVIPルームに立ち寄った。VIP扱いされるような預かり資産がある訳ではないので多少気が引けたが、セール担当女性が頻繁に電話をくれるので立ち寄った次第。比較的新しい複合ビルの十数階にあるそのフロアは中々お金のかかった作りだ。エレベータホールやエレベータの中に行き先の案内がない。案内がないのもちょっと秘密クラブ的でVIPをくすぐるものがあるのかもしれないが、一般的には不便だろう。
しばらく雑談して帰り際に粗品としてくれたのが、その証券会社の名前がデカデカと入ったサランラップとポケットティシューだった。どちらも良く使う消耗品なので有難いのだが、VIPルームの豪華な雰囲気とまったく合わないので思わず笑いそうになった。
店舗を構える証券会社は内装にお金をかけて豪華な雰囲気を作り出している。自宅に近い田無駅前の野村證券なども場違いなほど内装にお金をかけている。訪問する顧客や見込み客のVIP心をくすぐる仕掛けなのだろうが、実質主義の私からすると無駄なお金をかけている以外の何物でもない。そのお金の出どころは株の売買を委託する顧客が支払う手数料から出ているのだから、個人的には「内装に無駄なお金をかけないで委託手数料を安くする方が良いですよ」と言いたいところである。
店舗にお金をかけないで委託手数料や信託報酬を安くしている意味ではネット証券やネット投信の方が実質的なメリットがある。当然私もネット証券(ないしは大手証券会社のネット取引)やネット投信を中心に使っているが、某証券会社もたまにIPO銘柄などを回してくるので、多少おつきあいをしている。
しかしこのような「店頭(ないしはセールスパーソンによる勧誘)+高い委託手数料を敬遠する顧客を引き留めるための引受銘柄の紹介」といったビジネスモデルが長続きするとは思えないのである。
今国内株式や外国株・外国証券への資産配分比率が話題になっているGPIFだが、その過去7年間(2013年まで)の年平均運用利回りは2%を切っている。プロがやってもこの程度の利回りなので、一般の個人投資家が1.5%以上の手数料(投信の信託報酬など)を支払って証券会社や投信委託会社に運用を委ねても、実質的なリターンは微々たるものだろう。個人投資家がリスクをとって稼ぐグロスの運用成果の大きな部分は証券会社等に流れ、それが豪華なVIPルームにつながっているのである。
「リスクマネーを証券市場に呼び込む」こともアベノミクスの一つの看板。そのことには基本的に賛成なのだが、あくまでお金を流し込む先は株式市場であり、その先の事業会社でなくてはならない。別の言い方をすると、手数料等で証券会社に流出する水漏れをminimaizeしなければならない、と思う。そのためには個人投資家が賢くならないといけないのだが、そのようなことは証券会社や銀行では絶対に教えてくれないのである。