今日(6月26日)の午後はモーニングスター社が主催する「相続税制改正セミナー」に参加した。ホテルオークラ東京で開催されたセミナーは資産家とおぼしき300名以上の参加者で活況を呈していた。主催はモーニングスター社だが、私は協賛の三菱UFJモルガン・スタンレー証券がかなり費用を負担したセミナーだと思っている。セミナー参加料は無料だが、同証券はセールス対象となる(私は別だが"(-""-)")見込み顧客リストを手に入れることができるのでpayoffするとそろばんをはじいているのだろう。
さてちょっと期待していた作家・石田衣良さんは体調不良で講演できず。ピンチヒッターで登場したのが藤巻 健史参議院議員だった。同氏は日本国債ディーラーとして20年ほど前東京市場ではちょっと名前の知られた存在。同年代だし、かって同じ同じ銀行にいたこともあるので悪口をいうつもりはないが、今日のお話は少し極論だと感じた。
何が極論か?というと同氏の話では「確率は低いけれど1ドル=1,000円という超円安が来る可能性がある」ということだった。その理由は日本の財政収支の悪さと国の借金の多さである。藤巻氏の主張は財政破たんが1990年代の韓国のような通貨安を招く可能性がる、というものだったと思う。この点について私は1ドル=1,000円は話を際立たせるためのレトリックだとしても、国の財政担当者がインフレ策を取ろうと考えているという判断自体には間違いはないと考えている。
荒い数字でいうと、日本の国の借金は1千兆円で税収は40兆円そこそこ。40兆円の税収があっても年間の財政赤字は40兆円である。このまま行けば借金は減るどころか増え続ける。消費税を更に2%いや更に10%あげてた程度ではとても返済できる借金額ではない(なお国の借金をゼロにする必要はない。GDPと同じ程度の借金はあっても良いだろうと私は思っている)
増税で国民生活を破たんさせないで借金を減らす方法はあるのか?というとそれはインフレを起こすことである。インフレは常に借金の実質価値を減らす。
インフレで国の経済の名目的な規模が大きくなると税収も当然増える。一方債務元本は名目貨幣価値で固定されているからインフレが進んでも債務額は変わらない。インフレは常に債務者の味方であり、債権者(国債の保有者、大部分は日本の個人・銀行・生保)の敵なのである。
分りやすい例として仮に年率4%でインフレが進むと20年後に貨幣価値は半分になっている。1千兆円の債務は額面通りで変わらなくても、その間に現在5百兆円のGDPは名目的に1千兆円に拡大しているから、国の債務は制御可能な範囲に入る訳だ。
藤巻氏はこの過程で一度クラッシュが起きる可能性がある程度あると判断し、それをリスクシナリオとしたポートフォリオを組むべきだと示唆するのだる。
激しいクラッシュが起こるのか?仮に起こるとするとその規模と影響はどの程度なのか?ということに私の想像はまだ及ばない。
しかし、この国の巨大な借金の残高を考えると、かなりのインフレを起こす、ないしは少なくともインフレが起きるという予想を市場に想起させないと国の借金返済の道筋が描けないところまで来ていることは事実だと思っている。
つまり国は国債の保有者等を踏みつけて、借金の実質的な切り下げを図ろうとしている訳だから、資産を持つ側もインフレヘッジを考える必要がでてきた、という説明には説得力があると私は感じている。
破壊的なクラッシュが起きるかどうか?という点について私はやや楽観的である。その理由は次のとおりだ。日本国債のリスクが高まると本来円安が起きるはずである。円安は日本企業の輸出競争力を高めるとともに、エネルギー等輸入物価の上昇を通じてインフレを引き起こす可能性が高い。これらのことが国債償還リスクを緩和する方向に作用する、という見立てなのだ。
ただし経済は生き物。大きな筋書通りに走るという保証はない。