山坂の降り方の3回目の話は道迷いとリカバリーの話だ。
5.下り坂の方が道迷いはリカバリーが難しい
中高年登山の増加に伴って事故も増えている。警察庁の統計によると山岳遭難事故の様態としては道迷いが4割強と一番多い。道迷いが「登り」で発生したのか「降り」で発生したのかは統計では示していないが、経験から判断すると降りで道迷いをおこす割合の方が多そうだ。その一つの理由は降りは勢いにのってドンドン降るため、道の分岐点など重要なポイひントを見落としてしまうことが登りより多いからだ。次に降りは日暮れが迫り山の中がうす暗くなっていることが多い。このためルートを見失いがちになることが多い。また降りでは「下に降りたら何とか人里までたどり着けるのではないか?」という安易な気持ちが働くことがある。特に山スキーなどでルートを間違えたことが分っても登り返すのが面倒な場合、そのような判断をして深みにはまってしまうことがありうる。
さて人生において登り坂と降り坂のどちらの方が道迷いをおこしやすいか?というとこれは分らない。登り坂で人は色々な選択肢を持つ。この学校に進学しよう、この会社に入ろう。ここに家を買おうなどだ。そして時にその判断が誤っていたことに気がつく。だが登り坂ではリカバリーができることが多い。どうしても自分に合わない会社に入ってしまったと判断すれば辞めて転職するという選択肢がある。
だが降り坂ではリカバリーが難しい場合がある。長年住んでいた一戸建てを大枚はたいて新築そっくりにしたけれど、その後病気等でケア付きの施設に移ることになった。住宅をリフォームしても、中古物件の価格は上昇せず、リフォーム費用は無駄になってしまった・・・・などというケースがあるのではないだろうか?
人生の降り坂では「時間」と「資金」という資源が限られているので、リカバリーは難しい。人生で降り坂の方が道迷いをしやすいかどうかは分らないが、道迷いをした場合、大きな事故につながる可能性があるのは降り坂であると私は考えている。