2,3日前にニュースに出ていたが、三井住友銀行が本支店内の現金運びに従事する高齢者従業員の負担を軽減するため、パワードスーツの着用テストを始めたということだ。
このニュースは現在の日本の幾つかの特徴を示している。
一つはロボット開発の技術力だ。少し前に三菱UFJ銀行が都内で接客ロボットの実用化を図るという記事がでていた。
二つの記事を重ねると、銀行の非判断的な業務では今後ロボットの力を借りることが増えてくると判断される。銀行以外の業界でもロボットがマンパワーを代替する可能性は高い。ロボットは少子高齢化対策の切り札になるのだろうか?
二つ目は「日本は相変わらず現金社会だ」という点だ。三井住友銀行では現金集金や本支店間の現金搬送に約1,600人の人員を投入しているという。インターネット取引、電子マネー取引が拡大しても現金がまだ大きな役割を占めているのだ。
三番目に現金搬送を担当する人員1,600人の内、約16%が65歳以上という点だ(Japan Real Timeによる)。定年延長や嘱託再雇用制度で65歳まで働く人が増えているが、65歳を越えても現金搬送等肉体的負担の大きい仕事に従事する人がかなりいるということだ。
パワードスーツを着用すると4割方負担を減らすことができる。つまり10キログラムの現金ケースを6キログラムの重さに替えることができるのだ。
私は若い時支店で百貨店の現金売上の集金を一時担当していたことがあった。その頃は若い行員が多く、交替でジュラルミンケースを下げて集金に行くことに余り抵抗はなかったが、最近の若手銀行員は現金搬送などの肉体的な仕事を忌避するのだろうか?そしてもっと知的で生産性が高いと思われる仕事を選好するのだろうか?
銀行業務におけるパワードスーツの活用や受付ロボットの活用は科学技術の活用例として歓迎するべきことなのかもしれない。
だがそれは言ってみれば「局地戦における部分的な勝利」に過ぎないような気がする。戦略的な観点からは「現金決済を減らし、決済業務を自動化する」とか「窓口業務を減らし、PCやスマートフォンによる決済・諸手続きに顧客を誘導する」ことが重要だと私は考えている。
局地的な勝利を過大視し、戦略的なミスを犯すリスクなしとはしないと感じたニュースだった。